2013 Fiscal Year Annual Research Report
ips細胞樹立とダイレクトリプログラミングにおける細胞状態遷移アトラクターの解明
Project/Area Number |
13J08047
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮本 直 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | iPS細胞 / リプログラミング / 細胞分化 / 遺伝子調節ネットワーク / 細胞内ノイズ / アトラクター選択モデル |
Research Abstract |
本年度は、細胞分化とリプログラミングに関する力学系モデルを構築し、その機構の理解を目指した。まず、論文やGene Ontologyの情報を元に、分化に関する小規模な遺伝子調節ネットワークを構築した。このネットワークは4つの遺伝子が互いに相互作用している。例えば、実際の分化機構に関わっているとされるNanog、Oct4、Gata6、Gata4がそれぞれの遺伝子に対応する。この遺伝子調節ネットワークに基づいて、ヒルの式型の微分方程式をたてて、力学系モデルを構築した。 多能性遺伝子であるNanogやOct4が高発現の状態を初期状態としてシミュレーションを行った結果、初期状態である多能性状態は遺伝子発現が振動するパターンを示し、細胞分裂に伴って位相がずれはじめ、最終的に分化する細胞が少数見られた。多能性状態において、遺伝子発現が振動することはKobayashiらによって実験で確認されており、その事実と一致する結果である。さらに、分化状態における遺伝子発現パターンも多能性遺伝子が発現しなくなり、分化マーカー遺伝子の発現が高く保たれるという既知の情報と合致した。 さらに、安定な各細胞状態を力学系におけるアトラクターと解釈し、構築したモデルにアトラクター選択モデルの考えをとりいれた。細胞の活性パラメーターが高い場合、細胞内ノイズは無視できるほど小さく、前述の分化モデルと同様の挙動を示す。逆に、細胞活性が非常に小さいときは細胞内ノイズが支配的であるため、ランダムな振る舞いをみせる。この機構を利用すると、細胞活性を非常に小さくすることで細胞内ノイズによるリプログラミングが起こることがわかった。 細胞の分化およびリプログラミングといった細胞の状態遷移の機構は未だ解明されておらず、臨床応用をはじめとしてその解明が待たれている。本研究はその解明に寄与できる重要な研究と考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既知の遺伝子調節ネットワークに基づいた力学系モデルを構築し、シミュレーションした結果、実験事実と合致する結果が得られた。また、遺伝子発現公共データベースであるGene Expression Omnibusから利用するデータの選定も進んでいる。本研究の目的である細胞の状態遷移に向けてモデル解析と実験データ解析の両面から研究が進んでおり、順調であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はエピジェネティックな修飾に関するパラメーターを導入し、リプログラミング機構の解明を目指したいと考えている。また、シミュレーションだけではなく、データドリヴンなアプローチとして網羅的な細胞種から得られ得られたRNA-seqデータの解析も行う予定である。
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Research Products
(4 results)