2013 Fiscal Year Annual Research Report
線虫をモデルとした個体間相互作用が行動を制御する分子機構の解明
Project/Area Number |
13J08052
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
土屋 純一 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 線虫 / 嗅覚可塑性 / 個体間相互作用 / 個体群密度 / フェロモン / 神経ペプチド |
Research Abstract |
個体群密度依存的に嗅覚可塑性を制御する神経ペプチドsnet-1の下流で機能する遺伝子を同定するために、修士課程までにsnet-1過剰株の抑圧変異体を、順遺伝学的なスクリーニングによって合計5株得た。このうちの1つJN1352について、由来の異なる2つの線虫株N2とCB4856の間の一塩基多型(SNP)を利用して原因変異のマッピングを開始した。しかし、大まかな遺伝子マッピングの段階で、原因変異の有無に関わらず、SNPの組み合わせにより嗅覚可塑性の表現型が大きく変動するという問題が発生した。そこで原因変異の存在が予想されたX染色体のみがCB4856由来になった株を利用する工夫をして詳細なマッピングを行った。その結果、β一Arrestinの線虫オルソログであるarr-1に点変異が見つかった。そこで現在、JN1352の表現型の原因が、arr-1の点変異であることを証明するために遺伝子導入実験を試みている。ARR-1はGPCRによるシグナル伝達を制御する分子である。神経ペプチド受容体として機能するGPCRは多く知られており、SNET-1の受容体もGPCRであることが予想される。したがって、arr-1の機能細胞や、関連が予想される遺伝子を調べることで、SNET-1の標的細胞や下流の分子経路を同定できる可能性がある。また、snet-1のnull変異体においても嗅覚可塑性の個体群密度依存性は維持されていることを発見した。この結果により、snet-1経路以外にも個体群密度依存的に嗅覚可塑性を制御する経路が存在することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では順遺伝学的な手法を用いており、目的の達成には、遺伝子マッピングをできるだけ手早く行い、複数の変異体の原因変異を同定する必要があることが予想されるが、現在1つの変異体の解析に留まっているため。
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Strategy for Future Research Activity |
JN 1352以外にも得られている、snet-1過剰発現株の抑圧変異体の解析を開始する。遺伝子マッピングの効率を上げるために、従来の一塩基多型を用いた方法に加えて、次世代シーケンサーによる全ゲノムシーケンスを併用する。
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Research Products
(1 results)