2013 Fiscal Year Annual Research Report
モダリティに依存しない表象の形成に関する認知心理学的・神経科学的研究
Project/Area Number |
13J08058
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
井上 和哉 関西学院大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 視覚 / 触覚 / クロスモーダル |
Research Abstract |
本研究の目的は, モダリティに依存しない表象の形成過程を認知心理学的・神経科学的に明らかにすることである。その中でも特に視覚と触覚の共通表象の形成過程を明らかにすることを目的としている。 平成25年度は認知心理学的な手法を用いて, 視触覚のモダリティに依存しない表象の存在の有無を検討した。形態表象を調べるための実験装置の納入及びセットアップが遅延したため, 始めに時間表象の共通性を調べることから着手した。研究1では, 視覚と触覚の時間表象の共通性を調べるために視覚刺激のフリッカー周波数及び触覚刺激の振動周波数が時間知覚に与える影響の半球機能差を検討した。その結果, 視覚的提示か, 触覚的提示かにかかわらず, 時間周波数情報を持つ刺激が左半球に伝達される場合の方が右半球に伝達される場合と比べて, 時間周波数の影響が大きかった。この結果は, 時間情報は共通の脳部位で表現されている可能性を示唆しており, モダリティに依存しない時間表象が形成されている可能性を示唆する。 研究2では, 視覚と触覚の時間表象の共通性をより直接的に調べるために, 視覚のフリッカー刺激が触覚刺激の時間知覚に与える影響を検討した。その結果, フリッカーの有無にかかわらず, 触覚の時間知覚は異ならなかった。この結果は, 共通の時間表象が形成されているという仮説とは一致しない。しかし, 感覚情報のインタラクションにはモダリティ間で非対称性が存在することがあるため, 触覚刺激の時間周波数が視覚刺激の時間知覚に与える影響を検討した。その結果, 視覚刺激の時間知覚に対する触覚刺激の時間周波数の効果も認められなかった。これらの結果は, 視覚と触覚で独立した表象が形成されている可能性を示唆しており, 研究1の結果とは一致しなかった。視覚刺激と触覚刺激の位置が空間的に一致していなかったために, モダリティ共通の表象の形成が妨害された可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
モダリティに依存しない形態表象を調べるための実験装置の納入及びセットアップが遅延したため, 形態表象の形成過程を調べるための実験への着手が遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
モダリティに依存しない形態表象を調べるための実験装置のセットアップが完了したため, 時間的表象についての研究を進めると同時に, 形態表象の形成過程を明らかにするための実験を行う。平成25年度の研究から, モダリティに依存しない表象の形成において, 視覚刺激と触覚刺激の空間的一致性が重要な役割を果たしていることが考えられるため, 平成26年度の研究ではモダリティ共通の形態表象や時間表象の形成における視覚情報及び触覚情報の空間的一致性の効果及び空間的一致性が準拠枠の変換に与える影響を調べることを予定している。
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Research Products
(3 results)