2013 Fiscal Year Annual Research Report
透明視知覚を利用した複合現実感(MR)環境下における遮蔽問題解決手法の開発
Project/Area Number |
13J08093
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吹上 大樹 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 透明視知覚 / 複合現実感 / 心理物理学 / 視認性 |
Research Abstract |
2つの透明な面が重なるとき、それぞれの面を構成する輪郭が重なる交点の周りの4つの領域の輝度の大小関係が、どちらの面が奥に見えるかを決めるということが知られている。本研究では、心理物理的な実験を行い、各領域の輝度の大きさを引数として、ある面が奥に見える確率が得られるような奥行き順序知覚モデルを推定した。この研究結果は、国内の研究会にて報告した他、査読付き論文としてJournal of Vision誌に投稿し、採択された。 次に、得られた奥行き順序知覚モデルを利用して、仮想物体の一部が現実の遮蔽物と重なっているような場合に、仮想物体が現実の遮蔽物の奥に知覚されやすくなるようなブレンディング手法を考案した。この手法では、前景(仮想物体の前面にあるべき領域)と背景(仮想物体の後方にあるべき領域)の輝度を得ることができれば、奥行き知覚モデルに基づいてブレンディングパラメータが自動的に決定される。明るさを求めるために、前景領域と背景領域の判定を行う必要があるが、明るさのみ得られればよいため、精度の高いセグメンテーション等は必要とせず、計算量を抑えながら遮蔽問題を軽減することが可能となる。本手法の効果はユーザーテストによっても確かめられた。この成果は、国内学会にて報告を行った。 仮想物体を半透明にブレンディングする際に生じる別の問題として、仮想物体の視認性がブレンディングする背景画像の輝度やテクスチャに大きく依存してしまうという点が挙げられる。この問題を解決するため、視認性を予測するモデルを用いて、任意に設定された視認性に最も近くなるようなブレンディングパラメータを自動的に決定する手法を考案した。本手法では、視認性予測モデルとして、画像圧縮時のノイズの視認性を評価するために提案されたモデルを用い、これをリアルタイムに動作できるよう改良した。本研究では、様々な背景画像にブレンディングされたパターンの視認性を実際に人に評価してもらう実験を行い、その評価結果がモデルによる予測結果と非常に高く相関することを確かめた。この成果は、現在査読付き国際学会に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度計画していた研究は概ね達成できたが、同時に新たな課題(プレンディングした仮想物体の視認性が背景画像に大きく依存する問題)もでてきた。しかし、この課題は今年度中にほぼ解決でき、その成果も査読付き国際学会に投稿中である。したがって、研究は順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、透明視知覚時の奥行き知覚順序モデルに基づいたブレンディング手法を、視認性ベースのブレンディング手法と合わせて改良した後、実際に複合現実感システムに組み込み、その効果を実証する実験を行っていく。また、その成果をIEEE Transactions on Visualization and Computer Graphics (TVCG)誌や学会等で発表していく予定である。
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Research Products
(3 results)