2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J08155
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 良樹 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 中間子原子核 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、η′中間子と原子核の束縛状態を探索する分光実験を、ドイツのGSI研究所において陽子ビームを用いて行なうという研究である.平成25年度までには、この実験のために必要な検出器、イオン光学系、データ収集システム等の開発や性能評価のテストを行なってきた.平成26年度には、GSI研究所において、加速器のビームを用いた実験を以下のように実施した. (1) Ni ビームを用いた光学系のテスト : Niイオンビームを用いて、スペクトロメータとして用いるFRSの新規開発したイオン光学系のテスト実験を行なった。その結果、新しい光学系がη′中間子原子核の分光実験に必要な性能を満たしていることを確認した。 (2) 陽子ビームを用いたバックグラウンドの測定 : 陽子ビームを用いて、本測定の環境におけるバックグラウンド粒子の測定を行った。そして、スペクトロメータ下流において測定する重陽子とバックグラウンドの陽子を識別する方法の最適化を行った. (3) 陽子ビームを用いて、η′中間子と原子核の束縛状態を探索する分光実験を実施 : 陽子ビームを1週間利用して、η′中間子と原子核の束縛状態を探索する分光実験を実施した。2.5GeVの陽子ビームを炭素標的に入射して、“陽子+炭素原子核→重陽子+η′中間子原子核”という反応で出てくる重陽子の運動量を、FRSをスペクトロメータとして使って精密に測定した。重陽子の運動量を測定することで、η′中間子原子核のエネルギーをmissing-mass法により求めることができる。予定した通りの高統計のデータを取得することができ、現在その解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べたように、η′中間子と原子核の束縛状態を探索する分光実験を実施することができ、研究は順調に進展している。また、実施状況としても、ほぼ申請書に書いた通りに(2年目である平成26年度までに、必要な検出器や光学系の開発、性能評価を行った上で、陽子ビームを用いてη′中間子と原子核の束縛状態を探索する分光実験の本測定を行うという計画通りに)進んでいる。このような理由から、おおむね順調にすすんでに進んでいる、と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年に実験を実施した後は、 取得したデータの解析を進めている。具体的には、(1) 測定対象である重陽子とバックグラウンドとして来ている陽子を、粒子の飛行時間を利用して識別する解析、(2) 検出器(マルチワイヤードリフトチェンバー)のデータから粒子の軌道を求めるための解析 (3)測定した粒子の軌道から粒子の運動量を求めるために必要な、スペクトロメータのイオン光学系の解析、 (4)微分断面積を求めるために必要な入射ビームの強度の解析、などを行っている。今後はこのような解析を進めて、最終的な物理結果を導き、その結果を論文として発表するように研究を進めていく。
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Research Products
(8 results)