2013 Fiscal Year Annual Research Report
亜硝酸動態と硝化微生物群集機能の解析による森林土壌の窒素維持・放出機構の詳細解明
Project/Area Number |
13J08161
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒岩 恵 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 亜硝酸 / 15Nトレーサー / 森林土壌 |
Research Abstract |
15Nラベル亜硝酸の添加培養によって森林土壌中での亜硝酸動態の詳細な解明を行った。試料には土壌の理化学性に斜面位置での差を有する森林斜面土壌(AO層、0-10cm土壌)を用い、亜硝酸生成速度と消費速度の算出を行った。また、亜硝酸態で添加した15Nがアンモニウム、硝酸、溶存有機態窒素に変換される量を定量することで、亜硝酸の消費径路として重要なプロセスを明らかにした。また、これらの亜硝酸動態と15Nラベルアンモニウムまたは硝酸添加実験から算出したアンモニウム/硝酸生成・消費速度の結果や土壌の理化学性を統計的に解析することによって、亜硝酸の動態にどのような環境要因が影響するかについて議論を行った。結果として、植生や理化学性に違いのある3カ所の森林土壌において亜硝酸生成・消費速度はきわめて大きく、亜硝酸の平均滞留時間が非常に短かったことから森林土壌において普遍的に活発な亜硝酸の生成と消費が生じていると考えられた。そのうちスギ人工林において亜硝酸動態の詳細な解明を行ったところ、添加した15Nラベル亜硝酸が溶存有機態窒素に変換される反応が顕著に生じるうることが示された。この変換反応は非常に迅速に生じ、特に有機物層では非生物的な亜硝酸の有機化が窒素保持のプロセスとして重要である可能性が示された。また、亜硝酸に由来するガス放出は特に0-10cm土壌において顕著であり、亜硝酸添加直後に生じる迅速な放出は主にpHや亜硝酸ガス濃度などの化学性に制御されていると考えられた。これらの結果は、比較的好気的な森林土壌においても生成した亜硝酸が硝酸に酸化されずに直接ガス態、あるいは有機態に化学的に変換される可能性を示す。このようにプロットスケールで亜硝酸のダイナミクスを明らかにした例はこれまで存在せず、従来の生物的な硝化・脱窒という反応のみを考慮した単純な窒素動態の記述を一新するものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた亜硝酸の森林土壌中での変換径路の解明についてとこれらのプロセスに影響を与える環境要因の解析について予定通り進行している。15Nラベルー酸化窒素の測定法の確立を予定していたが、これについては測定条件の検討とスタンダードガスの購入を行っており、今後濃度定量にっいてさらに検討を行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は亜硝酸生成消費プロセス(アンモニア酸化、亜硝酸酸化)に関わる機能遺伝子の定量を行い、速度データとの整合性を検討する。このことから、亜硝酸の生成消費プロセスにおける化学的な制御と生物的な制御の重要性の議論をおこなう。また、安定同位体ラベル亜硝酸を添加した際の一酸化窒素、亜酸化窒素、窒素ガスの定量を行うことにより、亜硝酸がどの形態のガスにどの程度変換されるのか、またその相対的な重要性はどのような環境条件に依存するのかを明らかにする。
|
Research Products
(2 results)