2014 Fiscal Year Annual Research Report
機能性配位子を持つモリブデン窒素錯体による高効率な触媒的窒素固定法の開発
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13J08163
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
栗山 翔吾 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 窒素固定 / モリブデン / アザフェロセン / 窒素錯体 / ピンサー配位子 |
Outline of Annual Research Achievements |
常温・常圧での窒素固定法の開発に向けた研究が盛んに行われているが、遷移金属錯体を用いた窒素分子からの直接的な触媒的アンモニア生成反応の例は限られている。最近私が所属する研究室において、PNP配位子を持つ二核モリブデン窒素錯体を用いた触媒的アンモニア生成反応の開発に成功した。この窒素分子からアンモニアへの変換過程では中心金属の酸化還元を伴うことから、配位子に酸化還元活性部位を導入した場合の影響に興味がもたれる。そこで私は酸化還元活性な分子であるフェロセンに着目し、既に PNP 配位子にフェロセンを組み込んだ窒素錯体の合成に成功し、大幅に触媒活性が向上することを見出した。詳細な検討によって、鉄とモリブデン間の相互作用が触媒活性の向上に寄与していることを見出した。昨年度はこれまでの知見を踏まえて、より強く鉄とモリブデン間の相互作用が働くと期待されるアザフェロセン型ピンサー配位子を持つモリブデン窒素錯体を設計しその合成を試みた。その結果、アザフェロセン配位子を持つ単核モリブデン窒素錯体の合成に成功した。合成したアザフェロセン窒素錯体を用いて触媒的アンモニア生成反応を検討したところ、当初の予想に反して触媒活性を示さなかった。従来のPNP配位子を持つ二核モリブデン窒素錯体においては、窒素分子で架橋された二核構造を有していることが触媒活性の発現に重要なことが明らかになっている。アザフェロセン窒素錯体は固体・溶液中でも単核構造を保持していることが実験的に示唆されており、この錯体が触媒活性を持たなかったことは、その単核構造に由来していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度においては、新規なアザフェロセン型ピンサー配位子およびその配位子を有する新規な単核モリブデン窒素錯体の合成に成功した。合成した単核モリブデン窒素錯体の類似の錯体の報告例は限られており、アザフェロセン配位子の特異な特性がその単離の鍵となったと考えられる。このアザフェロセン型ピンサー配位子の特異な配位環境は他の遷移金属錯体においても有効に働くと期待できる。さらに合成した窒素錯体のアンモニア生成反応に対する触媒活性の評価にも成功した。その結果、今後の触媒設計に対する重要な指針を得ることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
電子受容体となるフラーレンや、光増感剤として働くポルフィリン誘導体をPNP配位子の合成およびその配位子を持つモリブデン窒素錯体の合成を行い、光エネルギーを利用したアンモニア生成反応を検討する。さらに、モリブデンに代わりより安価な金属である鉄錯体を用いた触媒的アンモニア生成反応を検討する。具体的には、様々な多座配位子を持つ鉄窒素錯体の合成を試みその物性について評価する。さらに、触媒として用いて反応条件を検討することにより常温・常圧での触媒的アンモニア生成反応の達成を目指す。
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