2013 Fiscal Year Annual Research Report
トポロジカル絶縁体表面における電子及びスピン輸送現象の解析
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13J08225
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
野呂 昌生 東京工業大学, 大学院理工学研究科(理学系), 特別研究員(DC2)
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Keywords | トポロジカル絶縁体 / ディラック系 / ホール効果 / ゼーマン分裂 |
Research Abstract |
私は平成25年度、トポロジカル絶縁体表面での弱磁場ホール効果について勢力的に研究を行った。この研究では自身の以前の研究テーマであるグラフェンの輸送現象の知識を大いに利用する事ができ、トポロジカル絶縁体の分野において、重大な成果を挙げられたと考える。これは、25年度の研究計画として掲げたものと完全に対応しており、期待通りの成果をあげる事ができた。このシングルディラック系におけるホール効果は軌道項とゼーマン項の寄与から成り立ち、ゼーマン項はシングルディラック系特有のホール効果への寄与だと言う事をあきらかにし、適切な解析計算および数値計算により詳細な結果を求めた。本研究で用いた計算手法はグラフェンの分野では、比較的用いられるものであるが、トポロジカル絶縁体の分野においてこの手法を用いた例は少ない。本研究はトポロジカル絶縁体においてホール効果の詳細をこの手法によって明らかにした初の研究であり、基本的かつ重要な結果を見いだせたと言える。この意味において、研究目的であった、本研究をスピントロニクスの応用に向けた基礎研究に位置づけるというものを十分に達成できたと考えられる。 軌道項の寄与及び、ゼーマン項の寄与はフェルミ準位の関数として、それぞれ反対称及び対称である事が明らかになった。これによりこのゼーマン項の寄与は実験において軌道項と分離可能であり事も示唆し、実験との対応も議論した。なおこの研究結果を現在投稿論文として執筆中であり、本研究成果を含む内容を博士論文としてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究との整合性を明らかにする事で、本研究の結果が正しいものである事が明らかにできたので、計算ミスや根本的仮定の間違いなどの検討に時間を費やす必要がなかったから。
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Strategy for Future Research Activity |
不純物として短距離不純物、スピンフリップを起こす磁性不純物などを仮定してスピン伝導率を計算する。本研究をスピントロニクスの基礎研究に位置づけるために, 不純物によるスピン伝導率の制御を検討する。問題としてはあまり細かい計算にならないように気をつける事である。それと同時に新たな研究テーマの模索を行う。これは、研究の幅を広げて多角的な視点で物理を捉えるためである。 国際学会などに出席し新たな研究テーマを早い段階で発見し、そのテーマの論文の執筆活動も行う。新しいテーマ選びの注意点は、あまり今までの研究テーマと被りすぎず、かつ離れすぎていないものを選び、研究の遂行が極端に困難にならぬよう気をつける。
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Research Products
(1 results)