2013 Fiscal Year Annual Research Report
RNA結合タンパク質D8による寿命・代謝制御機構の解明
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13J08276
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鴨志田 祐己 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | RNA結合タンパク質 / 寿命延長 / インスリン抵抗性 / 糖尿病 / 肥満 / Senescence / 脂肪細胞分化 / PPARγ |
Research Abstract |
最初に、D8欠損マウスの表現系解析を行った。その結果、D8欠損マウスは加齢に伴う肥満に対して抵抗性を有し、脂肪組織量の顕著な減少が確認された。また、絶食・再摂食刺激や肥満負荷、摂取カロリーの制限によるD8発現量の変化は、脂肪組織において顕著に認められた。以上の結果から、D8の代謝機能臓器を脂肪組織であると考えた。 そこで、in vitroの脂肪細胞分化誘導実験を、D8が欠損した培養細胞を用いて行った。その結果、D8の欠損は、脂肪細胞分化の主要調整因子 : PPARγシグナルを抑制し、脂肪細胞分化を抑制することを見出した。この結果は、in vivoのD8欠損マウスの脂肪組織と一致した。 さらに、in vivoのD8欠損マウスは、雄特異的にインスリン感受性が亢進することを見出した。この時in vivo, in vitroにおいて、D8欠損によってインスリンシグナルが増強されることが分子レベルで確認された。以上の結果より、D8の欠損はインスリン感受性を亢進することを見出した。 続いて、D8によるインスリン感受性制御機構の検討を行った。近年、老化が糖尿病の原因になると示唆されている。そこで、D8欠損によるSenescenceの変動を検討したところ、D8の欠損によってSenescenceマーカー遺伝子の発現が抑制されることがin vivo, in vitroで認められた。以上の結果から、D8欠損マウスの脂肪組織ではSenescenceが軽減され、インスリン感受性が亢進することが示された。 最後に、D8が抗肥満・糖尿病の治療の標的となるのかを検討するため、D8欠損雄マウスに対して高脂肪食負荷を行い、インスリン感受性を検討した。その結果、D8欠損雄マウスは高脂肪食負荷に伴う肥満に対して抵抗性を持つとともに、インスリン感受性の悪化が緩和されていることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、本年度ではin vivoのD8欠損マウスの代謝に関与する表現系を見出すことに成功した。さらに、in vitroの培養細胞系におけるD8の機能の検討や、抗肥満・糖尿病治療薬としてのD8の検討も行うことができ、その機能するシグナルの同定まで行えたため、非常に順調に進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、どのようにD8が代謝制御を行っているのか、その分子機構を明らかにしたいと思っている。具体的には、D8の結合タンパク質を質量分析器で、結合RNAを次世代シークエンサーを用いて明らかにしたいと考えている。現在、D8の免疫沈降が、抗体の問題で困難であるため、生化学的手法を用いてリコンビナントのD8タンパク質を作製し、結合タンパク質・RNAの同定を行いたいと考えている。
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