2013 Fiscal Year Annual Research Report
雄の性機能を司る脳-脊髄神経ネットワークとその動作メカニズムの解明
Project/Area Number |
13J08283
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
越智 拓海 岡山大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | gastrin-releasing peptide / オキシトシン / 性機能 / 脳 / 脊髄 / 神経内分泌 |
Research Abstract |
研究代表者の所属研究室ではこれまでに脊髄(腰髄)に存在するgastrin-releasing peptide (GRP)ニューロン系が雄優位な神経ネットワークを構築し、雄の性機能を調節することを報告している。現在はこの新規に見出された性機能を司る回路システムと脳との機能的・器質的結びつきについて、脳内に細胞体を持つオキシトシン(OXT)ニューロンに着目して解析を進めている。 本研究では既に、腰髄におけるOXTの局所濃度と線維分布には雄優位の性差があり、脊髄GRPニューロンはOXT受容体を共発現することを明らかにしている。一方で、GRPニューロンのOXTに対する応答性は未だ不明である。本研究では、OXTに神経毒(saporin)を結合させた複合体をラット脊髄内に局所投与し、脊髄GRP系のOXTに対する応答性を解析した。OXT-saporin投与ラットにおいてGRPに対する免疫組織化学的解析を行い、GRPニューロンの脱落を明らかにした。これにより、脊髄GRP系はOXTに対する応答性を持つことが示唆された。 さらに、より詳細な脊髄GRP系の解析系の樹立を目指し、GRPプロモーターの下流に蛍光タンパク質(Venus)のcDNAを繋いだ遺伝子のトランスジェニック(GRP-Venus Tg)ラットの作出を行っている。本Tgラットでは、生細胞でのGRPニューロンを選択的に蛍光標識でき、GRPニューロンのOXTに対する応答生理のin vivoでの解析が実現できる。既に、GRP-Venusの遺伝子コンストラクトを作製、受精卵にマイクロインジェクションし、14ラインのGRP・Venus Tgラットの作出に成功している。蛍光発光を指標にしたキャラクタライゼーションにより、14ラインのうち2ラインにまでラインの絞り込みを終えている。今後さらに詳細なキャラクタライゼーションを行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究により、脊髄GRP系はOXTに対する応答性を持つことが示唆され、当該遺伝子改変動物の作出も順調に進んでいるものと判断する。以上の理由から、研究はおおむね順調に進展しているものと自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
OXTの脊髄GRP系を介した雄の性機能への作用を脊髄くも膜下腔へのOXT-OXTアンタゴニスト投与により明らかにする。まず、神経活性化マーカーであるリン酸化ERK (pERK)とGRPに対する免疫組織化学的解析により、射精に伴う脊髄GRP系の活性化を解析する。次にOXTを脊髄くも膜下腔に局所投与し、OXT投与による脊髄GRP系の活性化をpERK免疫陽性を指標に解析する。その後、脊髄くも膜下腔にOXTアンタゴニストを投与した個体において性行動解析を行い、OXTの性行動への作用を行動レベルで明らかにする。さらに、平成25年度に作出したGRP-Venus Tgラットについて、キャラクタライゼーション・ラインの絞り込みを進める。
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Research Products
(18 results)