2014 Fiscal Year Annual Research Report
雄の性機能を司る脳-脊髄神経ネットワークとその動作メカニズムの解明
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13J08283
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
越智 拓海 岡山大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | GRP / オキシトシン / 性機能 / 脳 / 脊髄 / 神経内分泌 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者の所属研究室ではこれまでに脊髄(腰髄)に存在するgastrin-releasing peptide(GRP)ニューロン系が雄優位な神経ネットワークを構築し、雄の性機能を調節することを報告している。現在は性機能を司る脊髄内回路システムと脳との機能的・器質的結びつきについて、脳内に細胞体を持つオキシトシン(OXT)ニューロンに着目して解析を進めている。
本年度は、雄の性行動時の脊髄GRP系を介したOXTの働きを明らかにする目的で、まず射精後の脊髄GRP系の活性化をphosphorylated Extracellular signal-Regulated Kinase(pERK)を指標に解析した。その結果、Controlに比べて、射精経験雄では脊髄GRPニューロンにおけるpERK発現が有意に増加することを明らかにした。さらに、脊髄くも膜下腔へのOXT投与実験を行った結果、OXT投与群ではVehicle投与群に比べて、脊髄GRPニューロンにおけるpERK発現が有意に増加することを明らかにした。このことから、射精時に腰髄で放出されるOXTは脊髄GRP系を活性化することで雄の性機能(射精)を制御することが示唆された。
さらに、より詳細な脊髄GRP系の解析系の樹立を目指し、GRPプロモータの下流に蛍光タンパク質 (Venus) のcDNAを繋いだ遺伝子のトランスジェニック (GRP-Venus Tg) ラットの作出を行った。本Tgラットでは、生細胞でのGRPニューロンを選択的に蛍光標識でき、GRPニューロンのOXTに対する応答生理のin vivoでの解析が実現できる。現在は本 TgラットにおいてVenus蛍光を発するニューロンが野生型のGRP同様アンドロゲンに対する応答性を持つかを明らかにする目的で、去勢Tgラットに対する慢性テストステロン投与実験を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究により、性行動時に腰髄で放出されるOXTが脊髄GRP系を活性化することで雄の性機能を制御することが示唆され、当該遺伝子改変動物の作出を終え、実際の解析も順調に進んでいるものと判断する。以上に理由から、研究はおおむね順調に進展しているものと自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度明らかにした性行動時の脊髄GRP系を介したOXTの働きを行動レベルで明らかにする。OXTアンタゴニストを脊髄くも膜下腔に投与した個体を用いて性行動解析を行う。また、OXTを腹腔内投与した個体においても同様に性行動解析を行う。これらの解析を通して、雄の性行動時におけるOXTの作用を行動レベルで明らかにする。
さらに、作出したGRP-Venus Tgラット成熟雄を去勢し、去勢後のVenus発現ニューロン細胞体数を解析する。また、去勢GRP-Venus Tgラットの皮下にテストステロンカプセルを植込み、慢性テストステロン投与を行う。慢性テストステロン投与個体においても、Venus発現ニューロン細胞体数を解析する。これらの解析を通して、Venus発現のテストステロンに対する応答性を明らかにする。
GRP-Venus Tgラットのモデル動物としての妥当性を検討した後、Venusを指標に脊髄GRP系のOXTに対する応答性を生きた状態で解析する。
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Research Products
(5 results)