2013 Fiscal Year Annual Research Report
デルフィニウムにおけるポリアシル化アントシアニン生合成遺伝子の全解明
Project/Area Number |
13J08285
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
西﨑 雄三 東京農工大学, 大学院工学府, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | アントシアニン / デルフィニウム / p-hydroxybenzoyl-glucose / p-hydroxybenzoic acid / ポリアシル化 |
Research Abstract |
デルフィニウムは、植物色素であるアントシアニンの7位に2分子以上のp-hydroxybenzoic acid (pHBA)を修飾させたvioldelphinやcyanodelphinと呼ばれるポリアシル化アントシアニンを合成し、青い花色を発色する。当研究室では、2010年にデルフィニウムにおいてアントシアニン7位の配糖化がアシルグルコース依存型の配糖化酵素によって触媒されることを見出したが、7位配糖化後におけるポリアシル化機構については明らかにされていない。本研究では、青色デルフィニウム萼片から調製した粗酵素液を用いて、アントシアニン3,7-ジグルコシドを受容体、p-hydroxybenzoyl-glucose (pHBG)を供与体とした反応において、反応時間に依存して、アントシアニン7位に結合したグルコースにpHBAが結合し、次にpHBAに新たなグルコースが結合し、そして2つ目のグルコースに対して2つ目のpHBAが結合する計3つの反応を検出した。これら各々の反応を触媒する、配糖化酵素とアシル化酵素をディジェネレートPCR法により単離し、配糖化酵素については、大腸菌組換え酵素を用いた生化学的解析、アシル化酵素については、pHBAが修飾されていないアントシアニンを蓄積するデルフィニウム品種を見いだし、遺伝学的解析を行うことにより同定することに成功した。また、様々なデルフィニウム品種の色素解析を行った結果、7位が何の修飾もされていないアントシアニンを蓄積するモーブ色を呈した数品種を見いだし、この原因について解析してみたところ、これらの品種では、pHBGが蓄積されておらず、これはpHBAを受容体、UDP-グルコースを供与体としてpHBGを合成する配糖化酵素遺伝子の発現が、青色デルフィニウムのそれに対して、消失あるいは著しく減少した結果であることを明らかにした。すなわち、アントシアニン7位ポリアシル化機構において、先行研究で明らかにされたアントシアニン7位配糖化反応と、本研究で見出された1つ配糖化反応と2つのアシル化反応では、pHBGが必要不可欠であること、そしてグルコース供与体とpHBA供与体という1物2役を果たす鍵化合物であることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
アシルグルコース依存型のアシル化酵素と配糖化酵素の存在は認識されているが、現在までの報告はどちらか1つの反応に着目したものであり、本研究では、明らかとなっていなかったアントシアニン7位ポリアシル化機構を明らかにするとともに、アシルグルコースの1種であるpHBGがアシル化酵素と配糖化酵素の共通の供与体として認識されることを初めて見出し、その価値は大きく、pHBGはZwitter Donorであるという新しい概念を提案した。
|
Strategy for Future Research Activity |
Cyanodelphinはvioldelphinを経由して合成されると考えられており、本研究では、violdelphinまでの生合成過程について明らかにしたが、その後の修飾反応についてはpHBGを供与体とした反応系では酵素反応産物を検出することはできなかった。このことからvioldelphin以降の修飾反応では、pHBG以外の物質が供与体として機能すると考えられる。当研究室では、violdephinを蓄積する品種を見いだしており、おそらくこの品種には、viodelphin以降の修飾に必須である供与体が蓄積していると考えられ、この品種の萼片抽出物を用いて、viodelphinからcyanodelphinに至る生合成過程を明らかにする。
|
Research Products
(5 results)
-
[Journal Article] Identification of the glucosyltransferase gene that supplies the p-hydroxybenzoyl-glucose for 7-polyacylation of anthocyanin in delphinium2014
Author(s)
Nishizaki, Y., Sasaki, N., Yasunaga, M., Miyahara, T., Okamoto, E., Okamoto, M., Hirose, Y. Ozeki, Y.
-
Journal Title
Journal of Experimental Botany
Volume: (in press)
DOI
Peer Reviewed
-
[Journal Article] p-Hydroxybenzoyl-glucose is a Zwitter donor for the biosynthesis of 7-polyacylated anthocyanin in delphinium2013
Author(s)
Nishizaki, Y., Yasunaga, M., Okamoto, E., Okamoto, M., Hirose, Y., Yamaguchi, M., Ozeki, Y. Sasaki, N.
-
Journal Title
The Plant Cell
Volume: 25
Pages: 4150-4156
DOI
Peer Reviewed
-
[Presentation] Identification of the glucosyltransferase gene supplying p-hydroxybenzoylglucose required to 7-polyacylation of anthocyanin in delphinium2014
Author(s)
Nishizaki, Y., Sasaki, N., Yasunaga, Y., Miyahara, T., Okamoto, E., Hirose, Y., Okamoto, M., Ozeki, Y.
Organizer
日本植物生理学会 第55回大会
Place of Presentation
富山、富山大学
Year and Date
2014-03-18
-
[Presentation] p-hydroxybenzoyl-glucose plays a "Zwitter donor"in vacuolar acyltransferases and glucosyltransferases for biosynthesis of polyacyl-anthocyanin in delphinium2013
Author(s)
Nishizaki, Y., Yasunaga, M., Okamoto, E., Okamoto, M., Hirose, Y., Yamaguchi, M., Ozeki, Y. Sasaki, N.
Organizer
7th International Workshop on Anthocyanins
Place of Presentation
Portugal、Porto、Porto University
Year and Date
20130909-11
-