2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J08400
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Research Institution | Okinawa International University |
Principal Investigator |
山田 浩世 沖縄国際大学, 地域文化研究科, 特別研究員PD
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Keywords | 近世琉球 / 王府官人制度 / 渡唐役 / 定役 |
Research Abstract |
本研究は、日本・中国への従属関係を前提に「小国」として独自の国家展開を果たした近世琉球社会、とりわけ、対外的な交易を家臣団統制の柱として成立していった官人制度が、どのように構成されていたのか、どのような特質を有していたのかを明らかにしようとするものである。これらの問題を明らかにするため、当時の琉球士族がどのように王府の官吏として登用されていたのか、王府はどのように必要な人材を養成しようとしていたのかを検討することとした。 研究計画では、初年度に王府の求心力の根源である官吏登用と報酬の関係について、また、欧米船への対応を担った「異国方」(異国係)及び登用制度の検討を行うとした。そのため、近年公開された尚家文書の収集・読解をはかるとともに、関係する史料の調査を行った。また、法政大学沖縄文化研究所及び東京都立中央図書館(特別文庫所蔵室)での史料収集調査を実施し、東京都立中央図書館に収蔵されていた近世琉球期の文教政策に関る先例を集成した『琉球學制文事資料』を発見した。同史料は、これまで沖縄戦ですべて灰儘に帰したとされていた『琉球史料』の一部であり、琉球の官吏登用制度の特徴ともいえる科試(試験による官吏登用方法)や学校所で行われていた教育に関する記録であった。同史料の分析により琉球においてどのような官吏登用方法が採られていたのか、またその具体的な実施・運営過程の一端が明らかになった。 この他に、中国へと渡航した存留通事や才府などの役職が、琉球国内においてどのように養成されていたのか、官人制度においてどのような位置づけを占めていたのかを検討し、琉球における官人制度の運営の中核的な役割を担っていたことを明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究目的に掲げた①官人制度の運営構造の解明、②異国方の解明の内、①に関る研究が順調に進展し、新史料の発見も相まって多くの問題を明らかにすることができた。一方で、①の解明により関連して蓄積が進みつつあるものの②の問題については課題も残っているため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に引き続き、尚家文書及び家譜史料、新たに確認された諸史料についての調査を進めるとともに、それらを総合的に精査して、異国方及び異国通事がどのように養成され、近世末期の王国制度を展開させていたのかを明らかにする。また、王府官人制度の構造的特徴と国家運営の特質の解明を念頭に置きつつ、検討課題を絞り進めることで体系的な研究を進めることを可能とする。
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Research Products
(5 results)