2013 Fiscal Year Annual Research Report
特異なプロトン応答性酸化還元挙動を示す新規機能性錯体の創製
Project/Area Number |
13J08401
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
三橋 了爾 岡山大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | プロトン共役電子移動 / ルテニウム錯体 / 酸化的脱水素化反応 / 電子酸化反応 |
Research Abstract |
本研究では、2-(2-イミダゾリニル)フェノラト配位子(Himn)または2-(1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)フェノラト配位子(Hthp)を有するルテニウム(III)錯体([Ru^<III>(Himn Xbpy)2]^<2+>または[Ru^<III>(Hthp)(bpy)_2]^<2+> ; bpy=2,2'-ビピリジン)における塩基添加による特異な還元反応の反応機構を解明し、これを利用した新規機能性錯体の創製を目指す. 本年度は反応の詳細について明らかにした。 ・Ru(III)錯体の塩本添加による酸化還元挙動の調査 上記のRu^<III>錯体の重アセトニトリル錯体と塩基の反応を^iH NMR分光法によって追跡した。その結果、[Ru^<III>(Himn)(Xbpy)_2]^<2+>においてはイミダゾリニル基が2電子酸化されイミダゾラト型錯体が生成するためにRu^<III>中心が還元されることがわかった。一方、[Ru^<III>(Hthp)(bpy)_2]^<2+>ではテトラヒドロピリミジル基からピリミジル基へ4電子酸化されることでRu^<III>中心の還元が起こり、[Ru^<II>(Hthp)(bpy)_2]+[Ru^<II>(pym)(bpy)_2]^+(pym-=2-(2一ピリミジル)フェノラト)が3:1で生成することがわかった。 ・テトラヒドロピリミジル基の電気化学的4電子酸化反応 サイクリックボルタンメトリー(CV)を用いて電気化学的手法による配位子の酸化反応を試みた。その結果、塩基存在下ではRu^<II/III>の1電子酸化を行うだけでRu^<III>錯体間の不均化反応を経てテトラヒドロピリミジル基の4電子酸化反応が進行することを明らかにした。さらに、大過剰の塩基存在下で微分パルスボルタンメトリーを測定することで、プロトン共役電子移動(PCET)反応の特徴である酸化還元電位のシフトが観測された。以上の結果から、テトラヒドロピリミジル基の4電子酸化はPCETによって誘起されていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究実施計画は、Hthp-配位子を含むルテニウム(III)錯体における塩基添加による特異な酸化還元挙動の詳細を解明することであったが、これまでにこの挙動はHthp-配位子の4電子酸化反応が進行するためであることが明らかとなった。また、この錯体系においては通常は強力な酸化剤や高い反応温度を必要とする4電子酸化反応を温和な条件で進行することがわかった。これらの結果は当該年度の研究実施計画を満たしていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果から、π-ドナー性のフェノラト型ドナーを配位子とすることで、ルテニウム錯体のRu^<III>およびRu^<IV>状態が安定化され、配位子の多電子酸化反応を促進することがわかった。一方で、これまでに用いた配位子ではフェノラト型配位子自体が反応してしまうため、触媒的に多電子酸化反応を行うことは難しい。そこで、今後はフェノラトドナーとして2-(イミダゾリル)フェノラト(Himl-)に着目する。この配位子はイミダゾール基のプロトン化状態を変化させることで金属錯体の触媒活性を制御できると考えられる。そして、[Ru(Him1)(tpy)Cl]^<nt>型錯体(tpy-2,2' : 6'2"-ターピリジン)を合成し、その酸化還元触媒能について調査する。
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Research Products
(4 results)