2013 Fiscal Year Annual Research Report
中国環太行山脈地区の新石器時代末期から初期王朝期における文化移行過程に関する研究
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13J08459
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保田 慎二 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 先商文化 / 二里頭文化 / 新砦期 / 王湾三期文化 / 東下馮文化 / 山西省中部 |
Research Abstract |
本年度は、主に先商文化の研究史の整理と問題点の抽出および土器データベースの作成、二里頭文化の土器編年の確認作業を行った。 当初の計画では、初年度に山西省の東下馮文化の土器データベースを作成し、それをもとに土器の分類を行い、編年を作成する予定であった。しかし、『鶴壁劉荘』、『輝県孫村』、『安陽鄣鄧』など2012年度後半以降に河北省や河南省北部に分布する先商文化の重要な報告書が立て続けに刊行されたことが分かり、まず先商文化の土器の分析から行うことにした。 その結果、先商文化の土器に関する研究史は①編年に関する研究、②地域性に関する研究、③起源に関する研究の3つの柱に分けることができるとした。特に、①と②についてはいまだ学界の統一的な見解が形成されていない。また、③については先商文化が山西省中部に起源するとする見方が支持されているが、土器様式全体を比較すると、一概にそうとは言えない事実があることを明らかにした。 データベースの構築については、資料の劇的な増加もあり、現在も入力作業中であるが、出土遺跡・遺構・報告時期・器種・胎土・色調・文様・サイズを主な入力項目とし、図版のデジタル化などはすでに済ませている。 二里頭文化の土器編年については、すでに豊富な研究史があり、これらを参考にしながら改めて編年の確認を行った。基本的には従来の4期編年で大きな問題はないと考えるが、新砦期については地域性と考え、一部で洛陽盆地周辺の王湾三期文化や二里頭文化と時間的に併行し、山東などに由来する新砦期に見られる要素の影響を受けた洛陽盆地に二里頭文化が成立したと考えた。 以上の研究内容を現地で確認するために、河南省および広東省を中心とした地域で、計2回の現地調査へ赴き、資料の実見を行った。平成25年度の調査内容な以上の通りである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
報告書の一斉刊行などの理由により、当初とは一部計画を変更したが、全体の計画には全く問題はない。先商文化や二里頭文化の研究史の整理、土器編年の構築作業ともに、計画通り進んでいる。また、それに伴う報告書と実際の遺物の確認作業も現地で済ませているため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は先商文化、東下馮文化、二里頭文化の関係を明らかにするものであり、そのうちの先商文化と二里頭文化の土器編年について、平成25年度の研究を通して構築する目途をつけられた。したがって、平成26年度以降は、まず先商文化の土器編年の構築、二里頭文化の編年の整理を優先して行う。その後、東下馮文化について土器データベースを構築したうえで編年構築作業を進める。そして、新石器時代からの各地域における文化変化を明らかにし、二里頭文化期においてそれらの地域間関係がどのようなものであったのかを明確にする。さらに、土器以外の墓や住居址も含め、環太行山脈地区文化圏におけるモノから見える文化変化にどのような背景が想定できるのかを明らかにする。 現時点における根本的な計画の変更などはなく、計画を実行するうえで大きな問題がでるような状況はない。
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Research Products
(4 results)