2014 Fiscal Year Annual Research Report
中国環太行山脈地区の新石器時代末期から初期王朝期における文化移行過程に関する研究
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13J08459
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保田 慎二 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 先商文化 / 下七垣文化 / 土器編年 / 社会構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は主に、先商文化とされる下七垣文化の編年について整理し、さらにその社会構造を明らかにするため、河南省鶴壁市の劉荘遺跡で検出された墓の分析を行った。具体的な研究内容および調査内容は以下の通りである。 下七垣文化の編年については、層位的根拠を持ちつつ土器が報告されている章鄧遺跡、葛家荘遺跡、宋窯遺跡および劉荘遺跡から考えた。そして、結果的に土器型式の組み合わせの変化を指標として、下七垣文化を3時期に区分した。また、9月には、この土器分類の蓋然性を確認するために、河南省および河北省に赴き、下七垣文化に属する土器の実見調査を行うとともに、劉荘遺跡の踏査を行い、周辺の地理環境などについても認識を深めることができた。 年代研究のほか、下七垣文化の社会構造について墓の分析から検討した。特に2012年に報告書が刊行された劉荘遺跡では、338基の墓を含む墓地全体が報告され、下七垣文化の社会構造を検討する格好の資料となっている。多くの墓からは副葬品として鬲、豆、盆が出土しており、これらの型式をもとに墓地を3時期に区分した。また各時期に沿って墓の分布を確認すると一定の方向に沿った分布の拡大が看取でき、墓地が二つの集団から構成されていることが分かった。さらに、これら2集団には明らかな階層上位墓が存在しており、集団間の関係についても東側の集団がより優位な状況であることを明らかにした。興味深い点としては、非日常的な副葬品が必ずしも階層上位墓に伴わず、階層表示の要素になっていない点を挙げることができた。 以上のように、平成26年度は二里頭文化併行期の環太行山脈地区東側の下七垣文化における年代観を整理し、さらにその社会構造までも明らかにすることができた。これは、最終年度の研究に向けた、大きな研究の進展であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画は環太行山脈地区の東西の先商文化および東下馮文化について、2年目までに土器の基礎的な整理を行うことになっていた。すでに先商文化としての下七垣文化については、ほぼ作業が終わっている。また、東下馮文化についてもデータベースを構築し、さらに3月には山西省侯馬市および太原市において、山西省文物考古研究所の協力のもと、資料調査を行っている。下七垣文化および東下馮文化と併せて検討すべき二里頭文化についても、2014年度に新報告が刊行されたため、詳細な年代観を把握することができた。これらの点については、おおむね研究計画に基づいて順調に進展したと自己評価することができる。 その他、本研究課題を進める過程で分析を行った下七垣文化の墓については、10月に北京の中国社会科学院考古研究所で開催された学会で発表する機会を得ることができ、成果の公表という意味では有意義であった。この点も、一つの収穫として評価することができる。 ただし、本来ならば東下馮文化の年代観の確定まで2年目で進めておきたかったが、下七垣文化の分析に当初の計画を超えて時間を割いたため、終わらせることができなかった。この点が課題として残ってしまった。しかしながら、報告に基づく基礎資料の収集およびデータベースの構築等はすでに目途がついており、土器の分類作業も進めているため、3年目の早い段階で年代観の確定作業を終了したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目には、まず既述したとおり東下馮文化の土器をできる限り早い段階で整理し終え、その年代観を確定する必要がある。その上で、下七垣文化、東下馮文化、二里頭文化の時間的併行関係を把握する必要がある。そして、この作業を終え次第、速やかに下記の作業に移らなければならない。 当初の計画では、3年目には土器以外の資料、つまり住居址や墓からも環太行山脈地区の諸文化における影響関係を明らかにし、より多角的な視点から地域間の関係を捉えることになっている。住居址や墓の報告数は限定的であり、資料数も土器ほどは多くないために、まずは資料の収集とデータベースの構築を夏期までには終えたいと考えている。そして、データベースをもとに、夏期における現地調査を通して住居址および墓の地域性を明らかにする。その上で土器から抽出した地域性との対比を行い、より多面的な関係性を描き出す予定である。 以上の作業を遅くとも年内には終わらせ、年明けからは3年間の研究の総括と報告書の刊行作業を行いたいと考えている。なお、基本的には当初の計画に沿った研究の進捗であるため、特に大きな変更点はない。また、現在のところ、資料調査についても問題なく行うことができている。
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Research Products
(5 results)