2014 Fiscal Year Annual Research Report
上古中国語音韻体系の共時的・通時的研究~出土資料を中心に~
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13J08544
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野原 将揮 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 上古音 / 声母 / 出土資料 / 楚簡 / びん語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下の通り、研究を進めた: 1.少の字音研究 「少」は複雑な諧声関係、通仮関係を有しているかのように見えるため、音価再構が極めて困難である。諧声関係では明母/m-/等と諧声関係を有しているかのようであり(杪)、通仮(当て字の用法)関係に目を向けると心母/s-/「小」等と通仮関係にあるようである。本年度は主にこの複雑な様相を呈す「少」の上古音価を再構することを中心に研究を進めた。「少」の上古音価を再構することで、上古音研究の一つの方向性を示すことができると考えたからである。 本研究では甲骨、金文、戦国竹簡、漢簡のような出土資料に見える「少」と「小」の関係性や「少」の通仮例を整理し(「趙」「肖」)、ここから得られたデータとびん語書母との対応関係から「少」の声母を*st-と再構した。びん語書母との対応関係については「也談來源於*ST的上古音」(野原将揮 秋谷裕幸『中国語文』第4期:340-350頁。2014)として発表している。 2.ミシガン大学 また本年度後半よりミシガン大学にて、William H. Baxter教授と上古音研究を行っている。期せずして、2014年にBaxter氏とLaurent Sagart氏によるOLD CHINESE: A NEW RECONSTRUCTION(OXFORD UNIVERSITY PRESS)が刊行された。ミシガン大学にて、著者とともに新書に見える仮説だけでなく様々な問題について議論する機会を得ることができた。その中で新たな問題点も幾つか見出され、今後の研究の課題も見えてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は個別の語(「少」)の再構を主に進めたが、上古音研究の一つの手法を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までは個別字、個別的な資料を中心に扱ったが、今後は春秋・戦国時代から漢代までの全体的な音変化の流れについて考察を加えてきいたい。また単語家族についても考察を加える予定である。
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Research Products
(4 results)