2013 Fiscal Year Annual Research Report
戦間期欧州における平和主義とその利用 : ハンガリーとフランスの人権連盟を手がかりに
Project/Area Number |
13J08554
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
辻河 典子 東北大学, 大学院法学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 平和主義 / 戦間期 / ヴェルサイユ体制 / 中央ヨーロッパ / ハンガリー / 亡命者 / 共和主義 / 社会主義 |
Research Abstract |
本研究課題は、戦間期ヨーロッパにおける国際関係を平和主義の理念とその運用状況の分析を通じて多角的に議論することを目的としている。歴史学を主な手法とした地域研究の観点から進め、フランス人権連盟の活動、フランス国内のハンガリー人権連盟の活動、それを受けたハンガリー国内の改革派知識人の活動を、他の国際的な平和主義運動やコミンテルンとの関係も踏まえながら比較し、戦間期のヨーロッパにおいて平和主義が各政治集団の意向で政治利用される状況を明らかにすることを目指す。 採用初年度の本年度は、ハンガリー人権連盟の活動とハンガリー国内の改革派知識人の平和主義運動に対する見解の整理を課題とし、特にハンガリー人権連盟の成立過程において重要な役割を果たしたハンガリー系亡命共和主義者の活動を二つの観点(1918年10月の革命を主導した政治家集団と人権連盟との関係/ハンガリー国内での活動に限界を感じた共和主義者と人権連盟ならびにフランス国内のハンガリー系亡命者)から分析した。 その分析を通じて明らかになったのは次の二点である。一点目は、このハンガリー系亡命共和主義者たちが列強に自身の主張を発信する上でパリ講和会議主導で設定された戦間期中・東欧の国際体制を利用していたことである。二点目は、特に1918年10月の革命を主導した政治家集団たちに見られた特徴である。彼らは、ハンガリー政府との差異化を図って領土修正の主張を回避し、また共産主義とも一定の距離を取りながら、第一次世界大戦後のヨーロッパの政治枠組みへの対案を提示することを試みた。このため、列強諸国に働きかける際の活動方針の選択肢を結果的に狭めてしまったことが指摘できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究では「パリ講和会議主導で設定された戦間期中・東欧の国際体制に対するオルタナティブ」としての視角からハンガリー系亡命共和主義者の活動を検討してきた。本年度も当初はその観点から研究を進めていたが、研究成果を公表する過程でそのオルタナティブとしての限界についても考察する必要を指摘され、彼らの活動を同時代の国際関係の中でより広く位置づけることが可能となったから。
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Strategy for Future Research Activity |
ハンガリー人権連盟の活動、特にその成立過程において重要な役割を果たしたハンガリー系亡命共和主義者の動向に注目した初年度の成果を踏まえ、次年度は彼らの政治活動と他の政治主体(フランスの人権連盟など)との関係について同時代のヨーロッパ史の文脈に位置づけながら考察することを目指す。その際には、ハンガリー系亡命共和主義者の政治活動をパリ講和会議主導で設定された戦間期中・東欧の国際体制に対するオルタナティブとして解釈する従来の視角を採用するが、本年度の研究の中で明らかになったように、そのオルタナティブの可能性の限界についても意識した議論を可能であれば提示できるようにしたい。
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Research Products
(3 results)