2013 Fiscal Year Annual Research Report
日本における有権者のイデオロギー--ヒューリスティックとしての側面に着目して
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13J08571
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三輪 洋文 東京大学, 大学院法学政治学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | イデオロギー / 保守 / 革新 / ヒューリスティック / 政治的洗練 / 世論 |
Research Abstract |
本研究課題は, 大きく分けて2つの目的を掲げていた。一つは日本政治におけるイデオロギーの様態を明らかにすることであり, もう一つは日本を事例の一つとして有権者のイデオロギーに関する一般的な議論に貢献することである。本年度は, 前者に関して2つの, 後者に関して4つの研究を行った。 1. 日本政治におけるイデオロギーに関する研究(1)戦後日本の有権者の保革イデオロギーに関する定量的研究を包括的にサーベイするとともに, 最新のデータを用いて2012年衆院選後の日本政治の政策空間を析出した論文を執筆し, 査読付き学術雑誌に投稿した。(2)1980年代以降の日本において有権者レベルで保革イデオロギーが衰退した原因は80年代後半以降に進んだ政治的情報のソフト化に求められるということを示す分析を行い, 2つの研究大会・集会で口頭報告した。 2. 有権者のイデオロギーに関するより一般的な研究(1)争点態度のイデオロギー的一貫性と政治的知識について, 少なくとも現代の日本では通説的に考えられてきた関係がみられないことを示し, 政治的洗練の概念について再考を促す論文を執筆した。この論文は国内の査読付き学術雑誌にアクセプトされた。(2)有権者が保革イデオロギー軸上へ自己を位置づける際に, 人によって念頭に置く争点が異なる可能性があることを示す研究を行った。来年度に学会で報告を行う予定である。(3)2012年衆院選のような3つの大きな政党が争う状況においては, 有権者の対立軸の捉え方が一様ではなく, それは有権者の様々な属性によって規定されるとする研究を行った。これも来年度の学会報告が決まっている。(4)政党のイデオロギー位置に関する世論調査では回答者のタイプによって質問文の理解が異なりうることを指摘し, それを考慮した統計モデルを構築した。現在英語論文を執筆中であり, 査読付き学術雑誌に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画とは異なり, 日本政治におけるイデオロギーの研究とより一般的な研究を並行して行うことになったが, 1本の論文がアクセプトされ, 複数のプロジェクトを成果の発表に向けて進行させているほか, 萌芽的段階にある研究もいくつかあり, 研究課題全体としては, 日本における有権者の保革イデオロギー, および全世界の有権者がもつイデオロギーの様態と機能を明らかにするという研究目標に向かって着実に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は, 昨年度に着手した研究の公刊に向けた作業を進めるとともに, 引き続き, 主に日本政治を研究の舞台として, 有権者が政治的な判断を行う際に, イデオロギーがヒューリスティックとして機能するメカニズムに関する分析を行う。加えて, 研究の焦点をより一般的な文脈に移し, 国際比較のための世論調査データも用いるなどして, 有権者がイデオロギーをヒューリスティックとして利用するための条件や, 有権者がイデオロギーの理解に関する比較分析も行いたい。
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