2013 Fiscal Year Annual Research Report
シェリング芸術哲学研究-構想力の影響作用史と作品分析の観点から
Project/Area Number |
13J08587
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
八幡 さくら 神戸大学, 大学院人文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 構想力 / ドイツ観念論 / シェリング / カント / 芸術達哲学 / 創造性 / 概念史 / 作品分析 |
Research Abstract |
ドイツ観念論の哲学者F・W・J・シェリング(1775-1854)は、自身の芸術哲学において、芸術家の優れた制作能力を「構想力」と名付け、他の研究者よりも構想力を重視した。とくにシェリングはカント批判哲学を批判的に継承して、構想力に対立するものを統合し、哲学体系を成立させる役割を担わせた。シェリング芸術哲学は、理論と作品分析という両面から芸術家の創造性を解明するため、現代においてもなお芸術を議論する際に我々に有益な視点を与えうる。ただし、先行研究では、理論面と作品分析の応用面という両面からシェリング芸術哲学を研究しているものは少ない。そのため、本研究は、構想力概念に着目して、シェリング芸術哲学を理論的側面と作品分的の応用的側面の両面から研究することによって、シェリング芸術哲学を哲学史的かっ美学史的に再評価することを目指している。 本年度はこの研究目的を達成するため、以下の二点を中心に研究を行った。 (1)シェリングの構想力概念に関わる哲学・美学の影響作用史を整理し、比較研究を行った。具体的には、構想力概念に関する二次文献の収集を行い、カントの『純粋理性批判』と『判断力批判』を精読し、シェリング芸術哲学において実際にどのように受容・展開されているのかを両者のテキストから比較検討した。 (2)実際どのように構想力が芸術において働いているのかを具体的な作品例を挙げて分析し、シェリング芸術哲学の現代性および応用可能性について検討した。それに関わるシェリングの構想力および芸術哲学に関する文献と芸術作品を、国内外の図書館および美術館等で調査・収集した。以上の研究により、シェリング芸術哲学のカント美学との関係や作品分析の応用可能性を明示することができた。これらの研究成果を学会や学会誌で発表し、多くのシェリング研究者や哲学・美学の研究者と議論し、新たな情報の入手や解釈の再検討を行うことで、さらに研究を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標としていた、カントとシェリングの構想力概念に関する文献、シェリング芸術哲学および自然哲学に関する文献の調査・収集を国内外において順調に進めることができた。さらに、同本哲学会とシェリング協会大会シンポジウムでの研究成果発表、関西哲学会誌『アルケー』での論文採録およびシェリング協会の『シェリング年報』への論文掲載決定など、交付申請書記載の研究目的を達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、平成25年度中に収集することができなかった資料や文献の調査を継続することが必要である。そして、これまでに調査・収集した多数の文献および資料の整理と精読を推し進めるとともに、二次文献や研究者の解釈を、シェリングの原典と照らし合わせて、検討していくことが必要だと考えられる。さらに、研究成果を多くの国内外での学会・研究会で発表し、多くのシェリング哲学やドイツ観念論、美学の研究者たちと、自身のシェリング芸術哲学解釈について検討・議論し、意見や情報を交換していくことが必要である。これらの経験をもとに、シェリング芸術哲学における構想力に関する論文を精力的に執筆し、学会発表と学会誌への投稿を行っていくつもりである。
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Research Products
(4 results)