2013 Fiscal Year Annual Research Report
カルボニル置換基が誘起するπ共役系発色団の新規光機能の開拓と高分子材料への展開
Project/Area Number |
13J08624
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
仁子 陽輔 東京工業大学, 大学院理工学研究科(工学系), 特別研究員(DC2)
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Keywords | 蛍光 / ピレン / カルボニル基 / ソルバトクロミズム / 蛍光量子収率 / 細胞膜プローブ |
Research Abstract |
平成25年度は、研究実施計画に第一の計画として示した「複数のカルボニル基を有する色素に基づく多機能発光センサーの開発」を精力的に取り組んだ。このような発光色素は生命・医療関係の研究に有用であり、更に目的に応じた特性が次々と要求されるため、新規な発光色素の開発は急務と言える。この研究の過程で、当初の分子設計指針とは異なるが、同じくカルボニル基を有するピレン色素群において、新規発光現象を有する色素の開発に成功した。研究成果の詳細を以下に示す。 1) 強力な電子ドナー(アミノ基)とアクセプター(アルデヒド、ケトン基)を有するピレン色素の開発 : このテーマにおいて申請者は、ピレン特有の電子状態を利用することによって、「強力なソルバトクロミズム」と「高い蛍光量子収率」を両立する色素の開発に成功した。ソルバトクロミズムとは色素の発光色が外部環境によって変化する性質を指し、後述するバイオイメージングに極めて有用な性質である。通常、その発光色の変化が大きいほど色素の発光力、すなわち蛍光量子収率は低下するのに対し、本研究で開発された色素はそれらを両立した他に類を優れた色素であることが判明した。 2) ピレン色素の細胞膜プローブへの応用 : 現在、細胞膜には「脂質ラフト」と呼ばれる特殊な部位の存在が提唱されており、その部位の機能を明らかにすることが要求されているため、その可視化のためのプロープが数多く開発されている。本テーマでは、Theme lにて開発したピレン色素のバイオイメージングへの応用に取り組んだ。この色素は、これまでに知られている細胞膜プローブと比較して、その発光性だけでなく、圧倒的に優れた光安定性を有していることが判明し、また細胞膜の脂質二重層中に存在する異なる組成からなる部位を、ソルバトクロミズムによって区別する能力を有することも明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画から外れてしまった箇所がやや見られたが、結果として、より重要かつユニークな研究を行うことが出来、カルボニル基を有するπ電子共役系分子への理解が大きく深まった。さらにその過程において、当初の研究計画に記載していた分子群の合成手法等も確立することが出来たので、今後の研究速度の飛躍が期待出来る。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績に記載したように、本年度中に開発したピレン色素は極めて有用であり、その研究範囲を広げる必要性が生じてきた。今後は、その色素群を更に改良し、世界最高の細胞膜プローブの開発を目指す。また、次年度は研究実施計画に第二の計画として示した「カルボニル基を有する色素群による光触媒の開発」にも着手したい。そこに記載した分子設計とは異なるが、本年度中に獲得したカルボニル基を有する色素群の性質に関する深い知見と、その色素群の合成手法を駆使し、新たな原理によって駆動する光触媒の開発を目指す予定である。
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Research Products
(3 results)