Research Abstract |
今年度は, クリーク分割問題に対する効率の良い前処理を提案し, その性能をさまざまな問題例を用いて検証した, これは, 申請者の研究実施計画において1年度に計画していた内容である. また, これに加え, 非常に特殊な場合に限ってもクリーク分割問題が非常に難しい, より具体的にはNP-困難であることを証明した, クリーク分割問題とは, 質的データのクラスタリングに対する有効な最適化モデルとして知られる組合せ最適化問題である. この問題は, 0-1整数線形計画問題と呼ばれる扱いやすい形の最適化問題として記述できる. そのため, 最適化問題を解くソフトウェアを用いれば, 誰でも簡単に利用できるモデルである. しかしながら, データの個数の3乗に比例する制約式を必要とするため, 素朴に実装した場合に(実用的な計算時間と計算資源で)解ける問題の規模は非常に小さい. 一つ目の成果では, この数理モデルにおける効果的な前処理を提案した. この提案手法では, 与えられたデータ点の集まりを, 問題の等価性を失わずに, より少ないデータ点の集まりに変換することを考える. 例を挙げると, ある500個のデータ点からなる問題例が, この前処理によって, データ点が10個程度の等価かつ非常に小規模な問題例に変換されることが確認された. 変換された後の問題例は汎用的なソフトウェアで厳密に解くことができる. また, この前処理に用いられる計算時間は比較的短い. そのため, 実用的かつ効率の良い前処理といえる, 二つ目の成果は, クリーク分割問題の理論的な計算困難度に関するものである. これは, 当初予定していた内容ではなく, 既存研究で示された定理の証明に誤りを見つけ, その修復を行なった結果得られたものである. この結果は, クリーク分割問題が, 非常に特殊な場合に限ってもなお難しいことを言っており, クリーク分割問題の難しさをよく表した結果といえる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の一年目に予定していた内容に取り組み, 得られた結果を国際的な論文誌に投稿し, 受理された. また, これに関連する内容を国内外の会議(国内 : 1件, 国外 : 11件)で発表を行なった. 以上を考慮し, おおむね順調に進展したと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
上記の「9. 研究実績の概要」において制約式の本数が膨大になることがクリーク分割問題の弱点であると述べたが, これらのうち問題を解く上で必要となるものはごく一部である. そのため, 不必要なつまり冗長な制約式を簡単に見つけて省くことができれば, 従来の最適化ソフトウェアで扱える問題例の規模を拡大できる. 近年, クリーク分割問題の特殊ケースであるモジュラリティ最大化問題に対してこのようなアプローチが考えられ, 実社会の問題例に対して非常に効果的であることを示している. この結果をクリーク分割問題に一般化することや, 別の問題に適用することを今後の課題として考えている.
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