2013 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙における物質反物質非対称性の起源の問題および暗黒物質に関する研究
Project/Area Number |
13J08715
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山田 將樹 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 物質反物質非対称性 / 暗黒物質 / インフレーション / 宇宙の再加熱 |
Research Abstract |
本研究では物質・反物質非対称性を説明する機構の一つであるアフレック・ダイン機構に注目し、それが予言するQ-ballと呼ばれる非位相的ソリトンの性質を詳細に解析した。結果、Q-ballの崩壊によって物質・反物質非対称性と暗黒物質の存在量を同時に説明することができることを示した。これにより、バリオンと暗黒物質の存在量の観測値が非常に近い値をとっているという事実を説明することに成功した。 インフレーションはインフラトンと呼ばれる仮想的なスカラー場によって引き起こされると考えられているが、本研究ではインフレーション終了後にインフラトンの密度ゆらぎが増幅されI-bal1とよばれる準安定なインフラトンの塊を形成する可能性に注目し、そのI-ballがBose enhancementの効果によって急激に崩壊する条件を求めた。これによって、宇宙の再加熱温度がこれまで考えられていた値よりも何桁も大きくなる可能性を指摘した。この再加熱温度は物質・反物質非対称性や暗黒物質を生成する機構に密接に関係しているため、再加熱温度を正確に求めたことはこれらの起源の研究にとって非常に意義がある。 インフラトンの崩壊率が非常に小さい場合には暗黒物質が非熱的に生成されることになるが、先行研究の暗黒物質の存在量の計算ではLPM効果と呼ばれる非弾性散乱の反応率を抑制する効果が取り入れられていなかった。本研究ではこのLPM効果を考慮に入れ、さらに暗黒物質を生成する親粒子の数密度を正しく計算し、非熱的に生成される暗黒物質の存在量の計算を改善した。結果、暗黒物質の質量がオーダーで100 GeV以上であれば現在の暗黒物質の存在量が説明できることが示された。この機構であれば、近年のIceCube実験の観測結果が示唆している1 PeVスケールという非常に重い暗黒物質の存在量についても説明することができる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
共同研究者と協力してインフラトンの崩壊によって生成される暗黒物質の存在量を正確に見積もることに成功したことによって、我々が提案した物質・反物質非対称性と暗黒物質を同時に説明することができるシナリオの研究が急速に進展した。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで我々が提案してきた物質・反物質非対称性と暗黒物質を同時に説明するシナリオについて、広く知られているCMSSMと呼ばれるモデルに応用する。このように具体的な計算をすることによって、このシナリオの適用範囲が広いことを示す。これにはCMSSMのモデルにおける粒子の質量のスペクトルを求める必要があり、通常は非常に難しい計算を必要とするが、それには広く使われている計算コードを利用することによって解決する。また、近年出たBICEP2の観測結果を受けて、それから示唆されるインフレーションスケールとアフレック・ダイン機構が両立するかどうかについて詳細に研究する。
|
Research Products
(8 results)