2013 Fiscal Year Annual Research Report
パルス超音波を用いた過酷環境流動計測システムの開発
Project/Area Number |
13J08768
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
井原 智則 東京工業大学, 大学院理工学研究科(工学系), 特別研究員(DC1)
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Keywords | 超音波流速分布計 / 溶融ガラス / 位相差分法 / フェイズドアレイ法 / 導波棒計測 |
Research Abstract |
高レベル放射性廃棄物処理のためのガラス溶融炉に代表される高温・高線量の過酷環境下における流動計測技術を実現するために, パルス超音波を用いた超音波流速分布計測(UVP)法を溶融ガラス流動計測に適用することを目的とし, 以下の知見を得た. (1)高粘性流体である溶融ガラスの流動は, 1mm/s以下の超低速流動となっている. そこで, 超低速域に対応した信号処理アルゴリズム・位相差分法の開発を行い, 移動壁による擬似低速場と回転円筒内に生じる剛体流を用いて流速分布計測の妥当性を検証した, その結果, 位相差分法は従来のアルゴリズムに比べて1桁以上低い速度まで計測可能であり, その速度分解能はAD変換時の量子化ビット数によって定まることが明らかとなった. また, 剛体流内での速度計測値が理論値と一致し, さらには過渡流れにおける計測ロバスト性も有することから, 位相差分法が実流においても有用であることを示した. (2)水平管流路を用いたフェイズドアレイ流速分布計測を行い, ビームステア時における速度値の計測誤差を検討した. その結果, フェイズドアレイ法を用いた際には定在波の影響が顕著に出ることが明らかとなった. この対策として, 急峻な定在波除去フィルタを信号処理系に組み込むことで, 計測誤差が低減できることを示した. (3)高温計測用の導波棒システム自体の改善として, 導波棒材料および形状の最適化を行った. 材質としてアルミナ・ムライト・ジルコニア・溶融石英を用いて導波棒を試作し, 溶融ガラスに対する濡れ性と耐食性を比較検討した. その結果, ムライトが完壁な濡れ性を持つことが分かり, ガラス中への音響透過率についてもムライトが今回検討した材料の中では最も優れていることが分かった. 耐食性について, 12時間の接液試験の結果からジルコニアが最も優れていることが明らかとなった. 形状に関しては数値計算によって遅れエコーの周波数依存性があることを示し, 実験ともよく一致することを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過酷環境流動計測システムの実現に不可欠な流速分布計測のための信号処理の実装および検証を行い, さらに, フェイズドアレイ法を適用した際に発生する課題を抽出することが出来た. 溶融ガラスの高腐食性と低濡れ性により, 材料の選定が困難であったが, 適当な材料であるムライトを見いだし, 導波棒システム自体の改良も順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
2年目となる平成26年度では、超音波信号処理システムと導波棒システムを組み合わせた溶融ガラス内流動の計測を予定している. 溶融ガラスは高粘性流体であるので, 超音波の減衰率が高く, 超音波の到達可能距離も短くなる. そのため, 励振パルス信号および信号処理に改良を加えることで, 到達可能距離の延伸を行う必要があると考える. また, 遅れエコー特性の優れた導波棒についても平成25年度に引き続き検討を行い, 低ノイズな高温流体超音波計測システムの構築を目指す.
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Research Products
(4 results)