2013 Fiscal Year Annual Research Report
一細胞単位で設計された神経回路を有する三次元人工脳組織の構築
Project/Area Number |
13J08795
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 昭太郎 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 神経科学 / 神経回路 / 培養神経細胞 / 形態制御 / MEMS / マイクロナノデバイス / マイクロマニピュレーション / 神経情報学 |
Research Abstract |
本年度は、一細胞単位で神経回路を設計・構築するために本研究で構築している「培養神経細胞の回路素子化デバイス」の基盤を固める3つの研究を実施した。 まず、デバイスによって神経細胞の細胞体・神経突起の形態をそれぞれパターン化できることを示し、収率と細胞の動態について調べた。特に、海馬神経細胞では単一細胞を回路素子として扱う際に重要な軸索と樹状突起という情報の入出力端子を分離できていることを確認できた。 つぎに、マイクロサイズの物体の把持が可能な特殊なマイクロピンセットを用いることで、形態をパターン化した単一の神経細胞を培養液中で自在にハンドリングできることを示した。培養液中で数十~数百ミクロンの細胞を精密に、三次元的にハンドリングするために、マイクロピンセットを用いる点が新規な試みであり重要である。 最後に、形態をパターン化した神経細胞を回路基板に配置する研究を行った。回路基板として、組み立て後に細胞の挙動を観察しやすいシリコーンゴム製のマイクロ回路基板と、神経回路の動態解析に重要なマイクロ電極アレイ付き回路基盤をそれぞれ製作した。マイクロ回路基板には作りたい回路のパターンを溝状に彫り込んでおき、溝の中に順次細胞を配置した。神経細胞は元のデバイス上から回路基板へ配置後も生き、突起を成長し続けお互いに接触することが確認できた。また、マイクロ電極アレイ付き回路基盤では、従来は一つの電極に対して複数の神経細胞が載り混成された神経の信号しか計測できなかったところを、一つの電極に対し精密に一つの神経細胞を設計したパターン通りに配置できる点が技術的に有意義である。 以上、本年度の研究により、「培養神経細胞の回路素子化デバイス」の基盤が固まり、次年度の計画へ移行できる体制が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
一細胞単位の神経細胞の配置が可能になった時点で当初の計画を達成していると考えている。さらに、配置後の細胞の挙動の観察まで研究を進めることができ、論文投稿の準備も行っている。加えて、三次元的な組み立てを見据えて、光硬化性生体適合ゲルを利用した培養液中での三次元マイクロ物体接合法を開発し、査読付き国際論文誌に投稿、こちらはすでに受理された。神経回路構築後の活動計測のためのマイクロソケット付き微小電極アレイシステムも並列して開発しており、査読付き国際会議、国内会議で発表している。 以上のように当初の計画を超える内容を並行して進めることができているため、自己点検による評価を①にした。
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Strategy for Future Research Activity |
ラット初代培養海馬神経細胞を用いた神経胞の回路素子化を進める。研究計画の上では三次元の回路構築を行うが、本年度の計画ではまずは提案しているデバイスとシステムを用いて、二次元で回路を構築できることを示す必要があると考えている。回路構築後は電子顕微鏡観察と免疫染色によりシナプス結合を観察・定量的な評価を行う。さらに、マイクロ電極アレイシステムによって神経細胞の刺激と活動電位の細胞外記録を行う。本研究の遂行で問題となるのは、10ミクロン程度の海馬神経細胞を安定してハンドリングすることが現時点では本研究代表者のマニピュレーター操作の腕前では難しい点である。別のハンドリング方法を開発するという方向もあるが、まずは試行回数を重ねることでこの問題点は対処可能であると考えている。
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Research Products
(8 results)