2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J08833
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 将 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 染色体高次構造 / 減数分裂組換え / 複製チェックポイント / コヒーシン / 軸 / ループ / Spoll / ホットスポット |
Research Abstract |
研究目的 : 染色体高次構造を介した遺伝的組換えの開始制御機構を、分子レベルで詳細に明らかにする。減数分裂期の染色体は、DNA複製完了後に「軸」と「ループ」と呼ばれる特殊な高次構造を形成し、「ループ」に存在する「組換えホットスポット」が、空間的に隔たれた「軸」と相互作用することで、遺伝的組換えが開始される。申請者は昨年、分裂酵母において複製チェックポイントの制御下にある「Mde2」という因子が、DNA複製完了後に初めて発現して「軸」と「ループ」の相互作用を仲介し、遺伝的組換えを開始させるという分子機構を明らかにした。これにより、時間的・空間的に巧妙に制御された遺伝的組換え開始制御の実態が明らかになった。本研究ではまず、出芽酵母においても軸-ループ相互作用の基盤因子を同定し、複製チェックポイントと軸-ループ相互作用の関係を明らかにすること目的とした。 研究成果 : 出芽酵母において軸部の基盤となるコヒーシンRec8、及び軸性因子Red1の局在をChIP-seq法を用いてゲノムワイドに検証した。その結果、Red1は軸部に加えて、ループに位置するホットスポットにも結合すること示した。これにより、出芽酵母においても、分裂酵母同様に、軸-ループ相互作用の存在を実験的に示唆することができた。続いて、出芽酵母において、遺伝的組換えの開始反応であるDSB形成に必要なSpo11タンパク質、及びその補助因子(Spoll補助因子)の変異体を用いて、Red1のホットスポットへの結合を検証した。Spo11補助因子の1つであるMer2タンパク質は、DNA複製に伴いリン酸化修飾を受け、このリン酸化がDSB形成に必須であることが先行研究により明らかになっている。そこでまずMer2のリン酸化部位であるセリン残基をアラニンに置換した変異体を用いてRed1の局在をChIP-seq法により調べたところ、ホットスポットへの結合が顕著に低下することが示された。この結果から、分裂酵母と同様に、軸-ループ相互作用がDNA複製と連係して制御されている可能性が示唆された。さらに、Mer2以外の他のSpo11補助因子の変異体においても、Red1のホットスポットへの結合の低下が見られたことから、Mer2に加えて複数の因子が、軸-ループ相互作用の制御に関与していることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施計画として、(1)分裂酵母における分子機構の更なる解明(Mde2機能解析)と(2)出芽酵母における分子機構の解明(軸-ループ相互作用仲介因子の同定)の2項目を挙げていたが、(1)はyeast two hybridによるドメイン構造の解析は終了したものの、結晶構造解析による重要残基の特定に至っていない。一方、(2)については各種変異体を用いて組換え因子の染色体上における結合を網羅的に検証し、さらにヒストン修飾因子との関係性において新たな発見も生まれている。(1)と(2)を総合すると、おおむね順調に進展していると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度より、分裂酵母において複製チェックポイントと関連して軸-ループ相互作用を仲介する第二の経路の解明に取り組む計画であった。計画に先駆けて検証を行った結果、第二の経路に関与する因子の候補は絞れたものの、それらの変異体において減数分裂の進行に著しい影響が見られたことから、それら因子による機能解析が極めて難しいと判断された。そこで、分裂酵母においては、上記(1)について、重点的に研究を進める。 一方の出芽酵母においては、当初計画していた軸関連因子及び組換え開始因子に加えて、ヒストン修飾因子の機能についても検証を進めて行く。
|
Research Products
(3 results)