2013 Fiscal Year Annual Research Report
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13J08979
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松原 妙華 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 情報法 / 公益通報者保護法 / ジャーナリズム / 表現の自由 / 知る権利 / 取材源秘匿 / 情報公開 / イギリス |
Research Abstract |
ジャーナリストが知る権利や公共の利益に奉仕しながらも, 内部告発者を保護し, 社会的影響に配慮した報道が可能となる方法を明らかにすることを研究目的とし, 研究実施計画に基づいて下記のとおり研究を行った。 (1)内部告発を端緒とする報道が問題となった裁判例(報道機関及び記者を被告とする名誉毀損裁判, 告発者を被告とする名誉毀損裁判, 雇用関係に関する裁判)を検討し, その結果及びビジネス倫理等による内部告発の正当化条件の分析から内部告発報道における正当化条件をまとめ, 告発報道の正当性を担保する方法としての一考察を提示した。ジャーナリストによる権力監視の役割を果たすためには報道内容の真実性及び公共性を重視すべきであり, また告発者保護の役割を果たすためには匿名性の維持及び保護団体との連携が必要であるとし, 内部告発におけるジャーナリストの役割の重要性を明らかにした。(参照 : 研究発表欄「内部告発を端緒とする報道のあり方」) (2)社会的反響があった内部告発報道事案を対象に, 告発者やジャーナリストの方々にインタビュー調査を行い, また公益通報者のサポートを行う弁護士の方から現行の保護体制及び保護実態についてヒアリングを行った。文献研究や裁判記録から得られない告発者の思いや告発当時の状況, 告発における報道の重要性, 告発者が求める保護体制などについて知見を得た。 (3)イギリスの内部告発に関する理論及び内部告発保護制度やその文化背景について知るため, イギリス現地調査を行った。ベンサムプロジェクトの研究員にヒアリングを行い, ベンサムが提案する「世間法廷」や「パブリシティ」の概念を内部告発報道について適用する意義及び可能性について意見交換を行った。また, 弁護士を中心に設立された告発者支援団体を訪問し, 告発者保護においては法的な支援体制だけでなく非営利団体による総合的なサポートが重要であるという知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究計画の通り, (1)は成果として論文を発表することができた。(2)に関しては, 思いの他準備に時間がかかったものの, 可能な範囲で一定程度の調査を遂行することができた。(3)は3年次の計画としていたが, 本年度にイギリス現地調査を行う機会を得, 内部告発報道の理論部分に関する知見及び告発者保護に関する実務的な示唆を得ることができたため, 総合的に①の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)本年度と同様に今後も継続的に裁判例の収集及び事案検討を行う。具体的には, 本年度は総合的な事案分析を行ったが, 次年度では本年度の成果を生かした上で個別的な事案分析を行うとし, 特に日本において「知る権利」に関して大きな転換点となった外務省秘密漏洩事件(西山記者事件)について判例及び事案の分析を行う。 (2)インタビュー調査は内部告発報道の実状を知る上で欠かせないため, インタビュー調査が困難な事案については事案の変更を行いながら, 当事者の方々の理解と協力を得ながら研究倫理の観点からも慎重に, 可能な範囲内で引き続きインタビュー調査を行う予定である。 (3)英米の内部告発報道に関する裁判例及び事案を収集し、分析を行う。本年度はイギリス現地調査を前倒しで実施したが, 今後はこれを精査し, 本年度の調査訪問を生かして, さらなるイギリスの内部告発及び告発報道との比較研究を行う。またアメリカの事案についても資料収集を行いたい。
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Research Products
(1 results)