2014 Fiscal Year Annual Research Report
スピン軌道相互作用を用いた半導体中での完全スピン偏極源の電気的創出
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13J08985
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
長澤 郁弥 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Dresselhausスピン軌道相互作用 / スピン緩和 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は,半導体InGaAsの結晶構造に由来するスピン軌道相互作用成分(Dresselhausスピン軌道相互作用)をゲート電圧により制御することに成功した。Dresselhausスピン軌道相互作用は半導体量子井戸中でのスピン緩和機構において支配的な役割を果たしており,その制御は新たなスピントロニクス素子の創出にとって非常に重要な意義をもつ。 Dresselhausスピン軌道相互作用は結晶構造の反転非対称性により生じる相対論的効果であり,これまで系に固有の値をもつと考えられていた。その影響を制御する唯一の手法としては,半導体量子井戸の厚さを変えることのみであった。平成26年度の研究では,Dresselhausスピン軌道相互作用がFermi波数(電子密度に正の相関をもつ)の1次項と3次項の多項式であらわされることに注目した。 半導体量子井戸構造に取り付けたトップゲート電極によりFermi波数を変化させることで,Fermi波数の1次項と3次項の競合によりDresselhausスピン軌道相互作用の有効磁場の符号が反転することを観測した。符号の反転が起こる点では実効的にDresselhausスピン軌道相互作用の影響が無視できることを意味し,スピン緩和の抑制を考えるうえで重要な知見を与えるものである。以上の結果は,再帰Green関数法を用いた数値シミュレーションにより再現された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度より継続中のスピン幾何学的位相の研究に関しては,計算グループとの共同研究により,断熱性と非断熱性の遷移に注目した研究をおこなった。この結果は共著論文として投稿中である。また,当初の計画であるシングルリング構造でのAharonov-Casher効果の観測に向け,素子作製も継続中である。以上に加え,Dresselhausスピン軌道相互作用のゲート制御に成功したことから,当初の計画以上に進展があったと評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては,これまで培ったスピン干渉効果の観測技術を駆使し,より実験に適したスピン干渉計をデザインすることである。完全スピン偏極源の創出に向け,シングルリング構造のスピン干渉計の実現に注力する。
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Research Products
(4 results)