Research Abstract |
スポーツ競技者のメンタルヘルスの悪化が多く報告される中, 「困難で脅威的な状況にも関わらず, うまく適応する過程・能力・結果」(Masten, Best, & Gamlezy, 1990)と提唱されるレジリエンス(resiliencce)の重要性が増している。しかし, スポーツ競技者のレジリエンスがどのようにして生起するのか明らかにされていないことが多くの研究者によって指摘されており, そのことが応用・発展研究が行われていないことに繋がると考えられる。そのため, 平成25年度では, 横断的研究による, スポーツ競技者のレジリエンスのプロセスを検討するために, 2側面からのアプローチを検討し, これらの概要および知見を以下のようにまとめた。 1. Health Action Process Approach (Schwarzer, 1992)を援用した, スポーツ競技者のレジリエンス行動モデルについて検証した。その結果から, HAPAを構成する各尺度の信頼性と妥当性が確認された。また作成された尺度を用いて共分散構造分析によるモデルの構築を行った結果, モデルの適合度を示す各適合度指標は十分な値が示され, 直接効果を示す各パス係数および間接効果の値が有意であった。以上の結果から, Health Action Process Approachを援用した, スポーツ競技者のレジリエンスのプロセスを説明するレジリエンス行動モデルが構築された。 2. 1の研究結果をもとに, スポーツ競技者を対象としたレジリエンスのプロセスを検証するための新たな測定指標として, 主観的グラフ描画法を構成し, 妥当性の検討を行った。その結果, 主観的グラフ描画法によって得られた得点とパーソナリティ特性, 競技パフォーマンス, 自尊感情との間で有意な関連が示された。以上の結果から, スポーツ競技者のレジリエンスのプロセスを明らかにする一手法として, 主観的グラフ描画法の有用性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度では, 横断的研究による, スポーツ競技者のレジリエンスのプロセスの検討を行い, 新奇性の高い研究結果が得られた。また, 研究の進行状況も順調であり, 平成26年度には先述した2つの研究において, 国際学会の査読を通過し, ポスターにて発表する予定である。さらには, 今年度内にそれらの研究について論文投稿する次第である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究において, スポーツ競技者のレジリエンスのプロセスを検討するために, 1)Health Action Process Approach (Schwarzer, 1992)を援用したレジリエンス行動モデルの検証, さらにはそれらの研究知見をもとに2)レジリエンスのプロセスを測定する主観的グラフ描画法の作成, の2つの研究を進めてきた。しかし, レジリエンスのプロセスを測定する指標の信頼性および妥当性の検討が不十分であると思われ, 平成26年度ではそれらの検証を引き続き行う必要がある。さらには, スポーツ競技者のレジリエンスのプロセスを時系列的に解析するために, 前向きコホート研究(縦断的調査)による, レジリエンスが生起するまでのプロセスやレジリエンスを高める要因に関して調査を行いたいと考える。
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