2013 Fiscal Year Annual Research Report
日本アニメーション産業確立期に関する基礎的資料の調査と研究
Project/Area Number |
13J09020
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
木村 智哉 横浜市立大学, 都市社会文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 芸術諸学 / 美学 / メディア史 / アニメーション / コンテンツ / 映像産業 / オーラル・ヒストリー / 文献講読 |
Research Abstract |
本年度の研究計画のうち、中核となるアニメーション専門雑誌等での基礎資料収集と、それに基づく分析の成果の一部は、後述の学会発表にて、1960~70年代の東映動画におけるキャラクター・ビジネス部門の拡大に着目する形で、それがアニメーション制作とどのような関係を保ち、また変化させていったのかを論じた。 資料収集自体の意義についても、首都圏のマンガ・アニメ研究者の主催する研究会において口頭発表を行い、その意義と今後の資料活用についての討議を行ったほか、その調査中に日本経済新聞の取材を受け、同紙にコメントが掲載された。また、草創期アニメ専門誌の編集者たちへのインタビューも行った。 東映動画設立以前ないし直後からの古参スタッフへのインタビューは、4名を対象に実施した。その成果は、論文として総合的な成果を発表するには時間的なスパンやテーマが大きすぎるため、特別研究員採用中に刊行を予定している単著に内容を組み込むことを考えている。 ほか、東映動画に流入した東宝教育映画系のアニメーターに関する資料が手に入ったため、この東宝時代からの系譜を追跡して学会発表および論文としてまとめた。ただし投稿先の紙数制限上、論文は上・下に分割し、下は次年度に掲載することとなった。この研究は、従来のアニメーション史の記述や展示で重んじられてきた、東映が買収した日動映画株式会社とは異なる系譜の、後にCM製作を担当していく人員の流れを確認できるものであった。また、近年「メディア芸術の孤児」として注目された東宝特殊撮影技術との関連性も見出すことができた。さらに東宝教育映画のOBとの連絡もついたため、資料には残されていなかった部分についての質問を行い、回答を得ることができた。 ほか、メディア史、映画史関連の研究者との研究会の開催や企画、研究報告の担当なども複数行い、意見の交換と交流の場を持っことができた。いずれも博士論文における遺漏を補い、本研究計画の最終的な目的である単著の刊行に向けて、議論を深めうる重要な成果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
存命の関係者へのインタビューは定期的に行うことができ、その後も連絡をとりつつ質問を続けることができている。また雑誌資料収集については、まとまった古書での出品が見られなかったため収集は最低限度のものになったが、明治大学米沢嘉博記念図書館の協力を仰いで計画を進めることができた。新聞取材を受けたこともあり、成果発表にも寄与できたと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、単著刊行に向けて、草稿を書き進めるとともに、出版社の策定と交渉を行う。またそれに向けて、博士論文および本研究計画の遺漏を補うための、インタビューも定期的に続けていく。単著の構成案は既に完成しつつあるので、関係者が見つかれば具体的に質問を構成することはすぐにでも可能な状態にあり、成果の実現性は高い。 第二に、引き続き関係雑誌資料の捜索を進める。明治大学米沢嘉博記念図書館所蔵資料については、引き続き協力を仰いで続行する予定である。未整理資料の中にも重要なものをいくつか発見したため、その整理と精読をまず行う予定になっている。同館に未所蔵の欠号分については、国会図書館および都立図書館などの蔵書で補っていく予定である。
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Research Products
(6 results)