2013 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀前半の南米南部三カ国における近代スポーツの発展に関する歴史的研究
Project/Area Number |
13J09034
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松尾 俊輔 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ラテンアメリカ近代史 / スポーツ史 / 制度 / 国家 / 科学 / アルゼンチン / ウルグアイ / チリ |
Research Abstract |
平成25年度の本研究員の研究活動は、①チリ及びアルゼンチンについて行ってきた研究の整理及び再検討 ②ウルグアイの事例についての資料調査 の二つに大別される。 ①5月に北米スポーツ史学会においてアルゼンチンの事例に関する成果の一部を、8月にチリ歴史学会議にてチリの事例についての成果の一部をそれぞれ発表した。これらの研究発表は、いずれも19世紀末から20世紀前半のスポーツの発展をそれぞれのマクロな国家政治史的枠組みの中に位置づけるものであった。また11月には、UTokyo Forum内のチリ大学との共同セッションに参加し、20世紀初頭のアルゼンチン及びウルグアイの政治家=知識人たちがスポーツの公的振興を主張する際に、神経系の機能を通じて身体と精神とを結び付けていたことを指摘しその思想史的背景について考察を行った。本研究員の研究計画において、国家政治史と科学思想史というこれらふたつの視角は、20世紀前半の南米スポーツ史を叙述する上での二本柱を成しており、それぞれについて基礎的な方針を早い段階でまとめることができたのは重要な進展であった。 ②他方でウルグアイでの資料調査については、まず8~9月の現地滞在で、国立文書館等にて20世紀初頭の近代スポーツをめぐる国家制度的発展に関する一次資料の収集を行った。とりわけ1911年にスポーツを管轄する国家機構として設立された身体教育委員会に関わる資料を中心に探索し、同委員会の機関誌や関連する行政文書などを調査収集した。また3月には、同国観光スポーツ省スポーツ局に保管されている身体教育委員会会議録の閲覧が正式に許可されたため、その検討に注力した。この膨大な資料は、20世紀初頭のウルグアイ国家がスポーツを通じて社会といかなる関係性を築こうとしていたかを極めて経験的具体的に物語るものであり、また他の研究者が手を付けていないという意味でも意義深い資料である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウルグアイの事例については、極めて濃密な一次資料である身体教育委員会会議録の閲覧が可能になったことで、想定以上の進展を見ている。またチリに関しても、現地の研究者との共同でのイベント開催などの機会を通じて、継続的に調査を進めることができている。一方で、アルゼンチンの事例についてはまだ十分な時間を割くことができておらず、一次資料の収集および検討作業の進展具合は当初の予定を下回っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、身体教育委員会議事録を中心としたウルグアイでの一次資料調査を最優先に進める。これらの資料の検討を通じて、20世紀初頭ウルグアイのスポーツに関する制度的発展をその国家政治史の中に位置付けて提示することを目指す。加えて、チリ及びアルゼンチンを加えた三力国のスポーツに関わる制度史の比較分析を行い、各国の共通性と独自性に関しての基本的な指針を明らかにする。その上で、三カ国それぞれにおいて更に多様な一次資料(立法及び行政関連文書、新聞、雑誌、私的スポーツ団体の刊行物など)の収集と検討を行い、この指針の有効性を検証していくと同時に、こうした一次資料からスポーツや身体運動をめぐって展開された様々な科学言説を収集し、その科学思想史的背景を検討していく作業も並行して進める。
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Research Products
(3 results)