2013 Fiscal Year Annual Research Report
角度分解光電子分光による極性半導体のスピン軌道相互作用の研究
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13J09046
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂野 昌人 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 角度分解光電子分光 / 空間反転対称性の破れ / スピン軌道相互作用 / スピントロニクス |
Research Abstract |
1. BiTeX (X=I, Br and Cl)のサブ表面(~2nm)における電子構造の観測 レーザー角度分解光電子分光装置を用いて、BiTeX (x=I, Br and Cl)のサブ表面領域(~2nm)に形成される巨大ラシュバ型スピン分裂サブバンド構造を観測した。スピン分裂の大きさはBiTeXのバルクバンドギャップに対して大まかな反比例関係を示すことが明らかとなり、2次元巨大ラシュバ型スピン分裂伝導帯を得るための物質設計の新たな指針を得た。 2. BiTeIにおけるバルク3次元バンド構造とサブ表面2次元バンド構造の分離および解明 BiTeIにおいて真空紫外放射光を用いた波長依存角度分解光電子分光を行い、バルクの3次元バンド構造と、サブ表面の2次元バンド構造をそれぞれ分離観測した。最表面から厚さ~2nmに存在する電荷蓄積層の中に、結合エネルギー0~4eVにかけて量子化サブバンド構造(n=1,2)が形成されていることが明らかとなり、サブ表面領域に局在する2次元電子系のバンドエンジニアリングにおいて新たな知見を得た。 3. ヘリウム放電管・レーザーを光源とした角度分解光電子分光装置の建設 汎用的な光源であるヘリウム放電管を用いた角度分解光電子分光装置を完成させた。さらに、市販の非線形光学結晶BiBO、BBOを用いた汎用的な超高エネルギー分解能レーザー角度分解光電子分光装置を開発した。多結晶Auのフェルミ端を測定することによって7.4 Kにおいてエネルギー分解能0.9meV以下が実現していることを確認した。今後、レーザー光源の高強度・高分解能・偏光選択という利点を活かし、BiTeX (X=I, Br and Cl)に加えて、様々な物質の電子構造の高精度・短時間測定への利用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
BiTeX (X=I, Br and Cl)のサブ表面・バルクバンド構造の解明、およびレーザー角度分解光電子分光装置の開発を当初の計画よりも早く行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度以降、極性層状半導体BiTeX (X=I, Br and Cl)に加えて、空間反転対称性の破れた結晶構造を有する遷移金属ダイカルコゲナイドや、極性層状ビスマスパラジウム超伝導体に注目し、スピン軌道相互作用とバンド構造の研究することによって、新奇物性の解明・探求を行う。
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Research Products
(5 results)