2013 Fiscal Year Annual Research Report
雌蚊の宿主探索行動制御による蚊媒介性ウイルス感染症の予防
Project/Area Number |
13J09062
|
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
福光 由起 福岡大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | ヒトスジシマカ / 宿主探索行動 / 蚊媒介性ウイルス感染症 / 生体アミン / ドパミン / オクトパミン |
Research Abstract |
"雌蚊が吸血対象を探索する行動(宿主探索行動)"を抑制するツールは、吸血行動に至る蚊の数を減らし、蚊媒介性ウイルス感染症を予防することが期待される。ツールの標的は、蚊に特異的なタンパク質を想定している。しかし、宿主探索行動の制御機構は不明な点が多く、標的となるタンパク質を選定できない。ドパミン(DA)やオクトパミン(OA)等の生体アミンは、神経伝達物質として昆虫の生理現象を調節する。そこで、制御機構の解明にむけ、生体アミンに着目した。本研究は生体アミンが宿主探索行動に及ぼす影響を検討する。次いで、それらが宿主探索行動を制御する際に、発現量が変動する宿主探索行動制御遺伝子を確認し、生体アミンが宿主探索行動を制御する機構を明らかにする。得られた知見をもとに宿主探索行動制御タンパク質を標的とした、新しい抑制ツールの創出を目指す。 これまでに、ヒトスジシマカ雌のDA量を増加することで、宿主探索行動が減少することを明らかにした。そこで、本年度は、OAが宿主探索行動に及ぼす影響を検討した。その結果、ヒトスジシマカ雌のOA量を増加することで、宿主探索行動が減少することを明らかにした。これは、OAが宿主探索行動を制御することを示唆した。また、このときDA量の顕著な増加はなかった。これは、OAがDA量の増加を伴うことなく宿主探索行動を減少させることを示した。DAとOAの2つの生体アミンが雌蚊の宿主探索行動を制御することは報告されておらず、新たにその可能性を示した。また、本年度は、遺伝子発現解析にむけ、ヒトスジシマカマイクロアレイの作製を進めた。具体的には、マイクロアレイのプローブ設計のため、次世代シーケンサーを用いてヒトスジシマカcDNAの塩基配列を決定した。その結果、数百個の機能未知遺伝子を含む大量のヒトスジシマカ塩基配列情報を得た。この配列情報をもとに独自のカスタムアレイを作製できることが予見された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、OAが宿主探索行動に及ぼす影響を検討した。その結果、OAが宿主探索行動を制御する可能性を示した。この成果は、これまでに明らかにしているDAに加え、OAという2つの生体アミンが、蚊の宿主探索行動を制御することを示唆しており、今後、生体アミンによる宿主探索行動の制御機構を解明する基盤となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果から、DAとOAの2つの生体アミンが蚊の宿主探索行動を制御することが示唆された。今後は、セロトニンなどその他の生体アミンが宿主探索行動に与える影響を確認する予定である。また、DAやOAにより宿主探索行動の減少が確認された雌蚊に対し、マイクロアレイを用いて遺伝子発現解析を行う。マイクロアレイは、本年度得られたヒトスジシマカの塩基配列情報をもとに作製する。対照群に対して有意な発現量の差が認められた遺伝子は、宿主探索行動の制御遺伝子候補とし、宿主探索行動に与える影響を検討する。
|
Research Products
(1 results)