2013 Fiscal Year Annual Research Report
異常タンパク質分解系を亢進する食品成分の同定とその作用機序の解明
Project/Area Number |
13J09070
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大西 康太 名古屋大学, 大学院生命農学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | オートファジー / 機能性食品 / 栄養飢餓応答 / 抗炎症作用 / タンパク質品質管理機構 / ポリフェノール / 細胞生物学 / SWATH |
Research Abstract |
細胞内異常タンパク質の主要な分解機構であるオートファジーの破綻と広範囲の疾病(がん、神経変性疾患など)との因果関係が示唆されているが、本機構に着目した食品機能性研究はほとんど例が無い。そこで本研究では、オートファジーの活性化を作用標的とした機能性食品成分の探索及びその作用機構の解明を目的とした。 オートファジー分解基質であるp62の細胞内蓄積を指標として活性成分の探索を行った結果、ケルセチンを含む数種の食品成分を投与したJ774.1(マウスマクロファージ様細胞)において顕著なp62タンパク質の増加を認めた。また、これらの活性成分はmRNAレベルにおいてもp62を誘導した。p62は異常タンパク質選択的オートファジーに関与することから、これらの食品成分は本機構を活性化させる可能性がある。興味深いことに、ケルセチンは炎症性サイトカインの一種であるIL・1βの前駆体タンパク質を減少させた。現在、本抗炎症活性とp62誘導作用との関与について検証中である。また、p62誘導機構に関与が予想されるTFEBやATF4などの転写因子は、オートファジー関連遺伝子群の発現を幅広く制御することが報告されている。今後、既存のマーカー分子に加え、これらの転写因子の活悸調節も視野に入れながら活性成分の探索を行う予定である。 オートファジー活性と炎症応答との関係を理解するために、アミノ酸飢餓によりオートファジーを誘導したJ774.1における炎症関連遺伝子の発現を、質量分析装置を用いて網羅的に定量解析した(SWATH)。その結果、飢餓条件では、cyclooxygenase-2のタンパク質発現が著しく低下した。種々の検討を重ねた結果、本現象は、オートファジーの活性化ではなく、タンパク質翻訳機構の不活性化に起因する可能性が示唆された。現在、mTORC1及びGCN2に着目し、より詳細な分子機構について解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に従って、p62などのマーカー分子を指標とした活性成分のスクリーニングを行い、数種類の食品成分がオートファジー誘導活性を有する可能性を見出した。また、既存のマーカー分子のみならず、最近オートファジー活性との関与が報告された転写因子に着眼し、本活性に対する新しい評価系を構築しつつある点は高く評価できる。さらに、2年目に計画していたオートファジーと炎症応答との関与についての検討も既に始めており、質量分析装置を用いた細胞内タンパク質の網羅的定量解析によって、研究計画当初には全く想定していなかった興味深い結果を得るに至っている。以上のことから、本研究は、当初の計画以上に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度における研究により、既存のマーカー分子のみでは生体のオートファジー活性を正確に評価できないことを実感した。例えば、p62タンパク質はオートファジー活性だけでなくmRNA発現にも依存して増減することから、その発現量の変化だけを指標とした評価法ではアーティファクトな結果を排除できない。そこで、これらの既存マーカー分子に加え、オートファジー関連遺伝子の発現調節に関わる転写因子(TFEB・ATF4など)に着目し、活性成分の探索及び作用機構の解析を続ける予定である。また、オートファジーが亢進するアミノ酸飢餓条件下において、代表的な炎症関連遺伝子であるcyclooxygenase-2 mRNAの翻訳が抑制されることを見出した。今後、詳細な分子機構を解析し、オートファジー誘導性食品成分の抗炎症活性を議論する上で基盤となる知見を得たい。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Novel synthesis of zerumbone-pendant derivatives and their biological activity2013
Author(s)
Takashi Kitayama, Maki Nakahira, Kae Yamasaki, Hiromi Inoue, Chika Imada, Yuji Yonekura, Masataka Awata, Hikaru Takaya, Yasushi Kawai, Kohta Oknishi, and Akira Murakami
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Journal Title
Tetrahedron
Volume: VOL.69
Pages: 10152-10160
DOI
Peer Reviewed
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