2014 Fiscal Year Annual Research Report
異常タンパク質分解系を亢進する食品成分の同定とその作用機序の解明
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13J09070
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大西 康太 名古屋大学, 生命農学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | オートファジー / 機能性食品 / ポリフェノール / タンパク質品質管理機構 / 炎症応答 / 栄養飢餓応答 / 細胞生物学 / TFEB |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内異常タンパク質の主要な分解機構であるオートファジーの破綻と広範囲の疾病との因果関係が示唆されているが、本機構に着目した食品機能性研究はほとんど例が無い。そこで本研究では、オートファジーの活性化を作用標的とした機能性食品成分の探索及びその作用機構の解明を目的とした。 前年度、J774.1マウスマクロファージ様細胞において、オートファジーのアダプタータンパク質であるp62の遺伝子発現を誘導するポリフェノール類を見出した。そこで本年度において、作用機序の解析に取り組んだところ、転写因子Nrf2およびATF4の関与が強く示唆された。また、これらの転写因子の活性化機構に小胞体ストレス応答が関与する可能性を見出した。一方で、オートファジーにおいて最終分解過程を担うリソソームに新たに着目し、その活性を亢進するポリフェノール類をスクリーニングした結果、メチル化ケルセチン構造を有するフラボノール類に高い活性が認められた。さらに、本活性発現機構には転写因子TFEBが重要であることが明らかとなった。現在、これらのポリフェノール類が実際にオートファジー分解を促進するか否かを検証中である。 オートファジー活性化条件として知られているアミノ酸飢餓条件において、J774.1におけるcyclooxygenase-2タンパク質の翻訳が顕著に抑制されることを見出し、本翻訳制御機構にGCN2-eIF2 alphaシグナルが関与する可能性を明らかとした。また、菌体由来リポ多糖により刺激されたJ774.1において転写因子TFEBの遺伝子発現が著しく低下することを見出した。これに伴い、リソソーム・オートファジー関連遺伝子の発現も低下することが明らかとなっており、現在、詳細な作用機序について解析を行っている。これらの知見は生体の炎症応答とタンパク質恒常性維持機構との関連性を議論する上で重要な知見と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画ではp62やLC3など一般的なオートファジーマーカー分子のみを用いたスクリーニング試験を行う予定であったが、最終的な分解過程を担う細胞小器官であるリソソームに新たに着眼し、そのタンパク質分解活性を指標としたスクリーニング系を構築することで、異なる視点から活性成分の探索を行った点は高く評価できる。事実、スクリーニングに用いた評価系によって異なる活性成分が同定された点は興味深い。 二年目に計画していた活性成分の作用機構解析に関して、興味深いことに、ポリフェノール類が細胞に対して小胞体ストレスを誘導することで転写因子ATF4を活性化し、オートファジー関連遺伝子の発現を誘導する可能性を見出した。また、最近、オートファジー活性との関連が報告された転写因子TFEBに着目し、その活性を亢進する食品成分を同定できた。このように、研究計画当初には全く想定していなかった興味深い知見を得るに至っていることから、本研究は当初の計画以上に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度までの研究により、転写因子Nrf2およびATF4を活性化させ、オートファジー関連遺伝子(p62、Atg5、Atg7など)の発現を誘導するポリフェノール類や、転写因子TFEBの活性化を介してリソソーム活性を亢進するポリフェノール類を同定することができた。今年度の課題として、これらの食品成分が実際にオートファジー分解を誘導するか否かを検証する必要性が挙げられる。p62やLC3など既存のマーカー分子のみでは、正確にオートファジー活性を評価することが難しいと考えられるため、L-azidohomoalanine含有培地により細胞内タンパク質を非選択的に標識し、オートファジーによるタンパク質分解をモニターする新たな評価系の構築を計画している。 また、同定した食品成分が、オートファジーの活性化を介してがんや神経変性疾患など様々な疾病に対する予防効果を有するか否かを検証する必要がある。現在、海外渡航先のカリフォルニア大学サンディエゴ校にて、神経変性疾患のモデル実験を習得し、同定したポリフェノール類の抑制活性について検証を行う予定である。
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Research Products
(8 results)