2013 Fiscal Year Annual Research Report
高速フォトクロミック分子に基づく新規光エネルギーシステムの構築
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13J09076
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
山口 哲生 青山学院大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 高速フォトクロミズム / 逆フォトクロミズム / 光エネルギー変換 / キラルネマチック液晶 |
Research Abstract |
本年度は高速フォトクロミック分子とキラルネマチックネットワークを用いた新規光エネルギーシステムの構築を実現するため、新規高速フォトクロミックキラルドーパントの開発を重点的に行った。ビアリール架橋型イミダゾール二量体はキラリティを有し、ビアリール骨格の二面角が約90°である発色体と35~45°になる2,2'-異性体、1,2'-異性体を含む。このため、光照射によりビアリール骨格の二面角の制御が可能である。ビアリール骨格の二面角の制御を行うことで大きならせん誘起力の変化が実現できると期待し、新規フォトクロミックキラルドーパントとしてビアリール架橋型イミダゾール二量体に注目した。しかし、ビアリール架橋型イミダゾール二量体のフォトクロミズムについては未解明な部分が多い、そこで、ビアリール架橋型イミダゾール二量体の架橋基の構造や、イミダゾール環の4位、5位のフェニル基に置換基を導入することで、ビアリール架橋型イミダゾール二量体のフォトクロミック特性の制御を検討した。ビナフチル架橋型イミダゾール二量体は有色から無色への逆フォトクロミズムを示し、発色体の色は発色団であるジアザフルバレン構造に由来する。片方のイミダゾール環の4位、5位のフェニル基にメトキシ基を導入することで、これまでの架橋型イミダゾール二量体と同様に生成する発色体の構造制御が可能であることを示した。このことは適切な置換基を導入することで色調の制御が可能であることを示唆する。次にビフェニル架橋型イミダゾール二量体がナノ秒の時間領域で初期状態に戻る超高速なフォトクロミズムをしめすことをオランダのアムステルダム大学との共同研究で明らかにした。また、架橋基の構造を変化させることで、ビアリール架橋型イミダゾール二量体の2,2'-異性体から発色体への熱異性化反応は、ビアリール骨格の二面角が大きいほど早く、発色体から1,2'-異性体への熱異性化は発色体における共役系の長さが短いほど速いことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では本年度中に目的とする物性を有するキラルドーパントの分子設計と物性測定まで行う予定であったが、そこまでは至っていない。しかし、本年度の研究結果から、期待する物性を有するキラルドーパントを設計するための知見を集めることに成功した。このことから、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ビアリール架橋型イミダゾール二量体はこれまでのイミダゾール二量体とはことなり、熱戻り反応にかかる時間が比較的長い。この問題を解決するため、イミダゾール環の4位と5位に置換基の導入を行い、300ms以内に完全発色する誘導体の合成に成功している。しかし、この誘導体は光照射後に生成する消色体の半減期が短いため、同定に至っていない。また、光消色反応の量子収率が低いため、消色体の濃度が低い。このため、実際にキラルネマチックネットワークに添加しても十分な変化をもたらさないことが懸念される。消色体の構造については、目的とする物性が発現しさえすれば、それほど大きな問題にはならないと考えているが、消色体濃度については改善が必要であると考える。この問題の解決法として、ビアリール架橋型イミダゾール二量体の発色体の光異性化のメカニズムについて明らかにしたいと考えている。
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Research Products
(5 results)