2013 Fiscal Year Annual Research Report
光学活性スピロ環の新構築法の開発と抗腫瘍活性ラクトナマイシン類の不斉全合成研究
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13J09080
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
仲江 朋史 立命館大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 有機分子触媒 / キラル超原子価ヨウ素 / 不斉スピロ環構築 / 酸化 / ラクトナマイシン / 抗菌抗腫瘍活性天然物 |
Research Abstract |
抗菌抗腫瘍活性lactonamycinは新しい作用機構を持つ抗生物質として期待される天然物である。誘導体合成や不斉合成を可能とする効率的な合成法が開発できれば創薬研究へと役立つが、高度に酸素化されたCDEF環を含む六環性のアグリコン部と第四級不斉炭素を持つスピロラクトン骨格を有することが合成を困難なものにしており、構造多様な類縁体合成に十分な合成報告例が無い。このような背景下、申請者は有機分子酸化触媒としてキラル超原子価ヨウ素を用いた光学活性スピロ環構築法を開発し、本天然物のDEF環構築を行うことを計画した。最近当研究室では独自に開発したキラルヨウ素反応剤を用いたフェノール類からの不斉オルト位スピロラクトン化反応を見出している。しかし、キラルヨウ素化合物は量論量必要で、触媒条件下では不斉収率が減少するという課題があり、不斉誘起の機構も未解明のままであった。そこで申請者は構造修飾を施したキラルヨウ素触媒類縁体を各種合成し、本不斉環化反応における立体選択性の影響を精査した。結果、ヨウ素のオルト位にエチル基を導入することでエナンチオ過剰率が大幅に向上し、触媒的利用においても高いレベルの不斉誘起を実現した。生成物の不斉収率と触媒構造との相関を基に、更に不斉誘起のメカニズムを明らかにした。 続いて、不斉環化体を当研究室が以前に開発した位置選択的なDiels-Alder型反応を用いて別途合成したホモフタル酸無水物と反応させる全合成経路を計画し、環化付加の相手となるAB環ユニットの新規ルート開発に着手した。まず、シアノ基とエステル基が隣接位に共存するB環を5工程で合成し、これを還元することでA環ラクタムを一挙に構築した。以上の方法を経て、最終的に市販品から9工程、全収率22%で目的のAB環ユニットを合成することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
採用初年度目は、新規光学活性スピロ環構築法の開発とホモフタル酸無水物AB環の高効率的な新規合成ルートの開拓を検討した。スピロ環構築では、当研究室で最近見出した超原子価ヨウ素触媒の不斉誘起のメカニズムを初めて明らかとした。この知見を頼りに今後も新規不斉スピロ環構築法の発展が期待できる。また、ホモフタル酸無水物の短工程合成法を計画通りに進め、新規合成ルートの開拓に成功した。 以上の研究成果を査読付英語論文2報としてまとめ、複数の学会発表を行っている。このように本年度の研究に関して、期待通り研究が進展したものと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
当研究室で見出したアルキン側鎖活性化型スピロ環化反応(Org. Biomol. Chem., 2011, 9, 6899.)に構造修飾型キラルヨウ素類縁体を応用し、立体選択性への影響を検討する。さらに中間体ヨードニウム塩のX線結晶構造解析を行い、得られた構造的知見を頼りに効果的な不斉反応剤の構造最適化を行い、不斉スピロ炭素の新規構築法を実現する。その後、本天然物の光学活性なDEF環を構築する。一方で、別途高効率的に合成したホモフタル酸無水物AB環を用いて、当研究室で見出したDiels-Alder型環化付加反応(J. Org. Chem., 1985, 50, 2273.)を精査する。すなわち本天然物の類縁体合成を見据え、より効果的な環化付加反応への展開を計画している。
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Research Products
(4 results)