2014 Fiscal Year Annual Research Report
鍵盤の空間的記憶と知覚によるピアニストの打鍵位置制御
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13J09102
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Research Institution | Kyoto City University of Arts |
Principal Investigator |
大澤 智恵 京都市立芸術大学, 音楽学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 鍵盤 / 記憶 / 可動性 / 視覚 / 聴覚 / フィードバック |
Outline of Annual Research Achievements |
年度の前半には,鍵盤の空間的記憶の特性をさらに調査した。 空間的記憶を利用するための基準として, 1. 演奏者自身の身体の中心,あるいは88鍵の鍵盤の中心など,基本的に固定された点 2. 任意で可動な外部参照点 のどちらを基準に,鍵盤の空間的記憶が適応されているかを,参照点を鍵盤の中央付近にあるC4に置いた場合と,鍵盤の右端に近いC7 に置いた場合の,キー位置指示課題の正確性の比較を通して検討した。結果,指示課題にみる位置記憶の正確性は,C4が参照点であってもC7 が参照点であっても,各参照点に対するターゲットキーの相対的位置(距離)によって決まっていることが観察された。このことから,参照点として与えられる任意で可動な外部参照点が鍵盤の空間的記憶の基準位置となっていること,すなわち鍵盤の空間的記憶は与えられた基準位置とともに可動なものであることが示された。 また,上記より打鍵位置の制御には空間的記憶のほかに,それを規定する参照とする点についての情報が必要であり,それらは時々刻々と知覚されるキー位置に関する情報であると考えられる。どのようなモダリティの情報が演奏者にキー位置やその参照点を知らせるのに貢献しているかの調査を開始した。実験では,ピアノ演奏者が,通常の演奏状況であれば楽譜なしでほぼミスタッチなく余裕をもって弾ける楽曲の抜粋を,視覚情報,聴覚フィードバックのどちらかあるいは両方を遮断した条件と,通常の条件の合計4条件で演奏した。現在,まだ分析の途上であるが,いくつかの演奏データを個別に分析した結果,視覚情報が演奏者にキー位置を知らせる上では第一に用いられているらしいこと,ただし,聴覚フィードバックも視覚情報を補助しているようであることなどが示唆されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の研究目的は,ピアノ演奏を可能にする鍵盤位置知覚のしくみを解明することである。当初提示した,具体的に明らかにしようとする以下の内容 1.ピアノ演奏者がすでに持っている鍵盤の空間的記憶表象の特性(空間と手の左右差,参照とした点からの距離と精度の関係,訓練による精度の向上,鍵盤の記憶表象の精度がきまる空間的基準) 2.打鍵位置決定における外部から知覚する情報の利用の度合い(触覚,視覚,聴覚) のうち,1.についての調査をを完了し,国内外での発表とそれにともなうディスカッションの機会を得た。日本音楽知覚認知学会の春季研究発表会では,研究選奨を受賞した。また,2.についても実験および解析を進め,情報フィードバックの役割について解明する手がかりをつかむことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
鍵盤の空間的記憶に関する内容を1篇もしくは2篇の論文にまとめて,国際誌に投稿する。また,電子ピアノのMIDI情報をもちいた解析さらに進め,国際会議で発表・論文投稿するとともに,鍵盤の凹凸による触覚情報の役割を検討するためのデータを集め,各種情報フィードバックの役割を検討する。また,これらの課題をすすめるにあたり,演奏に関して主に感覚運動の観点からの研究を行っている海外(オーストリア)の研究室を訪問・滞在し,ディスカッションを行なうとともに実験や解析のノウハウを学ぶ機会を得る予定である。
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Research Products
(9 results)