2014 Fiscal Year Annual Research Report
社会主義体制末期の民衆運動とナショナリズム:ユーゴスラヴィアからみる東欧革命
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13J09120
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
鈴木 健太 東京外国語大学, 総合国際学研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 現代史 / ユーゴスラヴィア / 社会主義 / ナショナリズム / 民衆運動 / 1989年 / 東欧改革 / セルビア:スロヴェニア:クロアチア:マケドニア |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度の成果と課題を踏まえつつ、研究課題の中心に位置する1980年代末ユーゴスラヴィアの民衆運動とナショナリズムの相互連関について、主として、1:1987年以降のストライキなどの初期の民衆運動、2:その後の民衆運動の拡大と政治化、に関する分析・検討に取り組んだ。 それにあたっては、リュブリャナ、ザグレブ、ノヴィ・サド、ベオグラードなどの関連する旧ユーゴスラヴィアの主要都市で、現地調査および資料収集を実施し、1980年代後半の新聞・雑誌等の定期刊行物や記録集などの史資料を中心に、必要文献を収集(複写・購入)した。加えて国内でも、入手可能な関連文献の収集にあたり、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター等で史資料の補完と拡充を行った。 これらの史資料をもとに進めた分析・検討において、先の1では、ラビンやヴェプチャニの個別事例を扱いながら、全体として当時の自主管理制度における労組組織やストライキの意味と役割を考察した(一部成果が、共著図書第2巻の該当項目)。2では、前年度から引き続き、民衆運動の主体を成す「ナロード」概念を手がかりに、1988年夏からヴォイヴォディナ/セルビアで多発したデモ・集会についての検討を深めた。「ナロード」が民族的にも人民的にも解釈され、分化され得ない主体であったことが、運動における広範かつ大規模な動員を可能にした点を明らかにした(第64回日本西洋史学会大会シンポジウム報告、米国サンアントニオでの国際学会「第46回スラヴ東欧ユーラシア学会(Association for Slavic, East European, and Eurasian Studies -ASEEES)年次大会」におけるパネル報告)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年からの継続性のもとに、史資料の収集とそれに基づく分析・検討を前進させることができた。とりわけ、本年度の主要な成果となったヴォイヴォディナ/セルビアのデモ・集会に関する考察については、国内の学会のみならず、海外の学会で発表を行うことができた。また、こうした国内外の研究者との意見交換を含めた取り組みを通じて、本研究が残す重要な課題、民衆運動の拡大過程にどのようにナショナリズムが持ち出され、結びつけられていくかという問題についても、貴重な示唆を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度中に、受入研究機関への「頭脳循環を加速する戦略的国際研究ネットワーク推進プログラム」の採択が決定し(事業名「境界地域の歴史的経験の視点から構築する新しいヨーロッパ史概念」)、同「プログラム」参加の若手研究者の一人として、本年度3月末から中央ヨーロッパ大学歴史学部(ブダペスト、ハンガリー)に派遣されている。およそ一年間の計画で次年度末頃まで、派遣先を拠点に在外研究を行う予定である。同大学は、英語を中心言語とした中東欧(歴史)研究の交流拠点のひとつとなっている。次年度は、この在外研究の機会を生かし、当地で東欧各地の専門家の助言を受けながら、1980年代末の他の東欧諸国における事例の検討を深め、ユーゴスラヴィアの状況との比較分析の精緻化に努める。加えて、これまでの成果の論文としての刊行に精力的に取り組む。
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Research Products
(8 results)