2013 Fiscal Year Annual Research Report
モーセ伝承から見る三大一神教文学の比較分析-伝承の背後にあるもの-
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13J09142
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大澤 耕史 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ユダヤ学 / 聖書解釈 / ミドラッシュ / アガダー / 教父文学 |
Research Abstract |
本年度は、主にユダヤ教・キリスト教文学における伝承の収集および精読を進めるとともに、伝承をグループ化するためのトピックの選定を行った。そのための第一段階として、ユダヤ教・キリスト教文学の一次文献および二次文献の収集を国内外にて行った。具体的には、ユダヤ教のタナイーム期(紀元1~3世紀)のミドラッシュ、聖書外典偽典、キリスト教の教父文学およびそれらについての研究書、さらにはそれらを初めて「学問の対象として」扱ったユダヤ学(Wissenschaft des Judentums)の創始者たちの著作が中心である。夏期にはイスラエル国ヘブライ大学で開催された世界ユダヤ学会議(World Congress of Jewish Studies)に参加し、最新の研究動向に触れるとともに多くの研究者と交流し研究上のアドバイスを得た。 本年度の主な研究成果としては、1. モーセ伝承分析のための一つのトピックとして、モーセの兄であるアロンの出エジプト記32章金の子牛像事件に関する伝承に着目し、ユダヤ教・キリスト教文学それぞれどのような意図を持って伝承を残したのかを分析した論文を雑誌『一神教世界』第5号に投稿した。2. ユダヤ教・キリスト教文学がどのような傾向を持って歴史的に発展してきたのかを、「サタン」像に注目して分析した論文を『ユダヤ文献原典研究』第1号に投稿した。3. ユダヤ学におけるアガダー研究の学説史を、著名な研究者であるLouis Ginzbergの業績に焦点を当てながら分析し、国際シンポジウム「近代ユダヤ社会のなかのユダヤ学」(於京都大学)において報告を行った。 いずれの成果も、一次文献の精読に基づく、国際基準においても遜色のないものであり、単に海外の研究を日本に紹介する以上に、日本国内でのユダヤ学研究の基盤を整え、研究者間の学術交流を深めるために非常に意義のある研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、予定通りユダヤ教・キリスト教文学における伝承の収集および精読を進め、特定のトピックに基づく伝承分析の成果も発表した。一定の分量の文献を収集でき、精読も順調に進んでいるため、全体としてもおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き伝承の収集および精読を進めるが、ユダヤ教・キリスト教文学に加え、イスラームも対象に含める。積極的に国内・国際学会にて研究報告を行い(国際学会発表申請受領済み一件あり)、逐次細かい軌道修正を加えるとともに、最新の学術動向も視野に入れていく。基本的な作業が一次文献の精読であることに変わりはないので、引き続き同様の手法で研究を進めていく予定である。
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Research Products
(5 results)