2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J09147
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 信 東京大学, 法学政治学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 第一次世界大戦 / 日本史 / 船舶 / 国際秩序 / 国会議事堂 / 建築 |
Outline of Annual Research Achievements |
第一年度に米国議会図書館および公文書館にて収集した史料を分析し、その成果を含めて2014年6月に経済史研究会にて「第一次大戦下における船舶管理―船舶管理令と船鉄交換―」と題した研究報告を行った。近代日本の重工業化においても重要な位置を占めると評価される第一次大戦下の日米船鉄交換について、これまで鈴木商店を中心とした新興財閥(いわゆる船成金)らの役割が強調されていた先行研究に対して、これまで用いられてこなかった日米両国の政治史料を用いることで、交渉過程におけるアメリカの国内政治の規定性を明らかにした。 船腹が著しく不足した第一次大戦下の欧米諸国において船舶管理は国際協調の主要な場であり、これに対する日本の政策は、日本が国際秩序の中枢へと参入する重要な過程であった。この過程を明らかにするため、本年度は2015年2月から3月にかけて英国公文書館において、戦時下の国際協調の主要なアクターであったイギリスの史料収集を行った。この研究は、これまで中国問題ばかりが論じられてきた第一次大戦期の日本外交の別の側面を明らかにするとともに、国際秩序における経済問題の位相についても新しい知見を提供することが期待される。 また、第一次大戦下の官民関係において重要な役割を担った調査会を網羅的に調査する過程で注目された議院建築調査会における議論を中心に、日本国会議事堂の成立について論文を公刊した(「「議事堂をめぐる政治―国会議事堂研究序説」井上章一・御厨貴編『建築と権力のダイナミズム』岩波書店)。さらに、近代日本の政治家の空間と政治について明らかにするため、山県有朋の邸宅を事例に、分析枠組みの試論を提示した(「山県有朋とその館」『日本研究』第51集)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
史料調査については、初年度のアメリカでの史料収集を含め、英米で一回ずつの海外史料収集を行い、予定以上の進展がみられる。特に今年度の史料調査においては、イギリス外務省文書(FO)を広汎に調査した他、通商委員会(MT)、農林水産省(MAF)、内閣(CAB)の文書の海上交通関係書類など、これまでの政治史研究ではあまり用いられることのなかった史料も収集することができた。 研究成果としては、2014年6月には採用初年度の成果をまとめて口頭報告を行ったほか、2015年3月には二本の論文も公刊することができた。次年度の成果報告に向けての史料の調査・読解も進めており、今回の日本の論文に代表されるように、そのなかで戦時下の日本外交に止まらない論点を発見できたことは貴重な成果であったと思われる。 以上の通り、研究の細部においては変更もあるものの、研究はおおむね順調に進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる2015年度は、史料の分析をさらに進めるとともに、成果の発表に積極的に取り組みたい。成果の発表にあたって史料を補完するために、海外史料調査も予定している。 具体的には、まず2014年度にイギリスで収集した史料の読解を進めたい。収集した史料にはこれまでの日本の政治史研究で用いられてこなかった史料も含まれており、海運という領域から戦時下における日本外交および連合国間関係の新たな姿が見えてくることを期待したい。さらに、第一年度、第二年度においては十分に取り組むことのできなかった海外の個人文書の調査も進めたい。 こうした史料読解の成果をふまえたうえで、研究成果の公表としては、2014年度に口頭報告を行った戦時下日本の船舶管理についての研究を論文のかたちで公表することを目指す。さらには、こうした船舶管理政策を通じていかに日本が国際協調の枠組みのなかに参入したのか、それがパリ講和会議にいかにつながっていったのかについてなど、さらに研究を進展させ、積極的な成果の報告に励みたい。
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Research Products
(3 results)