2013 Fiscal Year Annual Research Report
ガスの吸脱着をバイアスとした分子運動と強誘電物性の融合システムの開発
Project/Area Number |
13J09150
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 仁徳 東北大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Paddle-wheel型Cu(II)錯体 / 単結晶X線構造解析 / 分子間相互作用 / 誘電率 / ガス吸着 / 構造相転移 |
Research Abstract |
ガスの吸脱着をバイアスとした分子運動と強誘電物性の融合システムの開発を目的にPaddle-wheel型Cu(II)ポリマー錯体を用いた各種実験を行った。分子運動によるバルクの分極変化とそれによる強誘電性の発現を期待しm-fluorobenzoate (m-FBA), 2,3-difluorobenzoate (2,3-F_2BA), m-methylbenzoate (m-MBA), m-chlorobenzoate (m-CIBA)を、それぞれ配位子として導入した4種類の錯体[Cu(II)_2(m-FBA)4(pz)]_n、[Cu(II)_2(2,3-F_2BA)_4(pz)]_n、[Cu(II)_2(m-MBA)_4(pz)]_n、[Cu(II)_2(m-CIBA)_4(pz)]_nを合成し、結晶構造解析、CO_2ガス吸着等温線、誘電率の温度-周波数依存性測定、示差走査熱量測定を行った。単結晶X線結晶構造解析の結果、配位子の違いにより、結晶中のポリマー鎖間の相互作用が異なることが確認された。また、195KにおけるCO_2吸着等温線の測定の結果、すべての錯体でCO_2吸着に伴う構造変化を示唆するオープンゲート吸着の存在が確認された。[Cu(II)_2(m-FBA)_4(pz)]_nに対し、真空下での温度-周波数依存の誘電率の測定を行うと、200~300Kの温度付近において誘電率の値は温度や周波数に関わらず一定であるのに対し、CO_2環境下での測定の場合、室温付近で誘電率のピークが出現することを見出した。既に吸着等温線の測定からCO_2吸脱着に伴う構造変化の存在が示唆されたことから、この誘電率の変化と構造変化が互いに相関していると考えられる。以上の観点から、高感度示差走査熱量測定を用いてCO_2吸着の効果を検討した結果、室温付近における構造変化が観測され、CO_2環境下で示した誘電率の異常が構造変化に由来すると結論できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
極性配位子を導入したガス吸着特性を有する銅二核錯体ポリマーを作製し、各種実験を行った。検討の結果、分子間相互作用の違いがガス吸着特性と相関すること、またガス吸着に伴う構造変化が誘電物性に影響するという知見を得た。ガス吸着と分子運動が連動した理想的な物性発現システムの作製に向けて、分子間相互作用を制御する観点から今後の方向性を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討の中で、ガス吸着と分子運動が連動した理想的な物性発現システムの作製に向けて、錯体結晶の分子間相互作用を制御することが必要であることを見出した。本研究課題の今後の推進方策として、分子回転が期待される部位の分子間相互作用を弱くすることで分子回転が実現するものと思われる。そこで、分子回転軸であるp-位に嵩高い置換基を導入することで、m-fluorobenzoateを配位子に持つ錯体[Cu(II)_2(m-fluorobenzoate)_4(pz)]_nの分子間で生じていたπ-π相互作用を阻害することが期待される。上記観点からp-bromobenzoateやp-iodobenzoateを配位子とするPaddle-wheel型Cu(II)ポリマー錯体を作製し、各種物性測定を行う。
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Research Products
(8 results)