Research Abstract |
本研究の目的は, 直交格子に基づく騒音伝播解析ソルバーを構築し, 実際の航空機に近い状態でエンジンから発生する騒音の伝播を流れ場も含めて解析することである. 去年度までの研究では, 境界埋め込み法を用いて, 複雑形状周りの騒音伝播を高精度に解析できるソルバーを構築し, 実験値や他の計算結果と比較することでその有用性を示した, 本年度はこれを発展させ, 構築した騒音伝播解析ソルバーに, オイラー方程式ソルバーによって得られる流れ場の物理量を取り入れ, 流れ場のある状態での騒音伝播の解析を行った. そのために以下のことを行った. まず, オイラー方程式ソルバーによる流れ場の解析では, エンジン流れの流入境界条件を設定する必要がある. 従来の境界埋め込み法による解析では, 物体かそれ以外かしか判定できないため, 一つの境界条件しか設定できなかったが, 本研究ではこれを発展させ, あらかじめ入力する物体境界データにフラグを設定することにより, 壁面における境界条件の場合分けを可能にした. これにより, 流入流れ場のあるエンジンナセルの流れ場解析が可能となった. 次に, 騒音伝播解析ソルバーにおいて, 境界埋め込み法を用いて流れ場のある騒音伝播解析を行った例は少なく, 境界における流れ場の取り扱いなどは不明瞭であった. いくつかの壁面境界条件の取り扱いを試行した結果, 壁面において滑り壁境界条件を設定するために, 壁面内部まで流れ場を再計算することで, 安定かつ高精度に解析することが可能であることが明らかになった. 最終的に, ファン面においてマッハ数0.27の流入流れ場のあるナセルから発生するファン騒音を解析し, 遠方場における音圧レベルを実験値や他の計算結果と比較した. 本ソルバーにより得られた計算結果は実験値と良好に一致し, 本研究において構築した流れ場のある騒音伝播解析手法の有効性が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた研究項目に対して, 本年度は70パーセント程度の進捗であった. 研究の遅れた主な原因としては, 解析ソルバーの構築に時間がかかったことと, 大規模な計算格子を用いた解析にソルバーが対応していなかったことである. 本年度はこれらの課題への対応に時間が割かれていたが, それでも70パーセント程度の進捗を達成することができたため, 研究はおおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は, ジェット騒音の解析手法の構築を行う. 構築する解析手法はStochastic Noise Generation and Radiation (SNGR)モデルと言い, 流れ場の解析と, 乱流騒音源の発生, 発生した騒音の伝播を分離して解析する. 物体付近の境界層流れ場を正確に解析するために, 既存の非構造格子ソルバーを用いて流れ場を解析し, 合成渦法により騒音源を発生させ, 騒音解析ソルバーにより発生した騒音の伝播を解析する. 合成渦法は主にLarge Eddy Simulationにおける流入境界条件として用いられており, 騒音源の発生に用いられている例はない. したがってまず, 合成渦法により乱流場を発生させ, 直接数値解析により得られた乱流場の特性値と比較することにより, その有用性を確認する, 次に, 単純な噴流に対してSNGRモデルを適用し, 騒音の発生とその発生メカニズムを確認する. 最後に, SNGRモデルをジェット騒音に適用することにより, 解析精度を確認する予定である.
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