2013 Fiscal Year Annual Research Report
生殖細胞に対する光細胞操作を駆使した重複受精機構の解析
Project/Area Number |
13J09285
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
永原 史織 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 重複受精 / レーザー細胞破壊 / ライブイメージング / シロイヌナズナ |
Research Abstract |
本研究では、シロイヌナズナを用い、重複受精時に2つの精細胞がそれぞれ卵細胞および中央細胞と正確に受精するための仕組みを解明することを目的とした。これまでに、二光子レーザー顕微鏡のフェムト秒パルスレーザーを用いて胚珠内の卵細胞を特異的に破壊し、胚珠内に放出された2つの精細胞の挙動を共焦点レーザー顕微鏡によりライブイメージングする系を立ち上げた。それに加え、卵細胞に比べてサイズの大きい中央細胞についても、レーザー強度や照射回数を検討することにより、破壊することに成功した。同時に、胚珠内の細胞の細胞膜が標識されたマーカーラインを用いることで、卵細胞および中央細胞を破壊した際の他の細胞の膜の状態を詳細に観察することが可能となった。これにより、卵細胞を破壊した胚珠内において、中央細胞は2つのうち1つの精細胞のみと受精する「多精拒否機構」をもっていることが示唆された。さらに、細胞機能を破壊する別の手法として、翻訳阻害を引き起こすジフテリア毒素の時空間特異的な発現による遺伝学的な細胞破壊のためのコンストラクトの作製を進めた。また、受精できない精細胞を生じるためヘテロ接合でしか維持することのできないgcs1変異体に関して、熱ショックによりホモ接合体を誘導するコンストラクトの作製を行い、熱ショックの条件を検討することによりホモ接合変異体を作出することに成功した。この成果により、すべての花粉がgcs1の遺伝子型・表現型を示す株を得ることができ、これまでには比較することのできなかった、受精直前の精細胞の放出という現象に伴う胚珠内での変化を解析することが初めて可能となった。さらに、今回確立したホモ接合体の誘導系を、精細胞の分化および受精能の獲得に関与する精細胞特異的な転写因子DUO1の変異体に応用する準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レーザー細胞操作により、重複受精時の受精相手決定のための雌雄配偶子間コミュニケーションを解析してきた。当初の計画に先立ち、卵細胞だけでなく中央細胞に関してもレーザーによる破壊を行うことが可能となった点で大きく進展したが、遺伝学的な破壊に関して準備段階にとどまっている点で計画以上であるとは言い難い。また、ホモ接合変異体の誘導系に関しては、真の確立に向け熱ショックの最適な条件の探索などが必要とされる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、レーザーによる物理的破壊だけでは中央細胞の膜融合能を阻害することができないことを見出した。そこで今後は、物理的な破壊に加え、遺伝学的な手法により細胞の機能を破壊することを試みる。また、精細胞が適切な位置へと放出される圏ことが重複受精の成立に重要かもしれないと考えており、膜の位置関係を詳細に観察するための精細胞膜マーカーラインを独自に作出した。今後、このマーカー遺伝子を既知の受精異常突然変異体へと導入し、胚珠内の細胞膜を標識したマーカーラインとあわせて、受精異常と放出位置との関係性を明らかにしたい。また、熱ショックによる受精異常変異体のホモ接合体の誘導に関しては、DUO1へと応用したのちに、次世代シークエンサーを用いてトランスクリプトーム解析を行うが、精細胞は含まれているRNA量がごくわずかであるため、少量サンプルから解析を行うための系の検討を行う。
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Research Products
(2 results)