2013 Fiscal Year Annual Research Report
長期一細胞計測系を用いた一細胞と集団をつなぐ理論的枠組みの構築と検証
Project/Area Number |
13J09314
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋本 幹弘 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別別研究員(DC2)
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Keywords | 長期一細計測系 / 遺伝子発現 / 細胞増殖 / ゆらぎ / 時系列 / 大腸菌 / 集団ダイナミクス |
Research Abstract |
I. 由来は同じであるが、発現量の異なる2つの大腸菌株(一つは蛍光タンパク質を過剰発現させた株)を使用した。一つの株については、炭素源、温度を変えた5つの環境について調べ、もう一つの株(過剰発現株)については、温度を変えた2つの環境について調べた。その結果、「一細胞の増殖率」よりも「細胞集団の増殖率」の方が高いことが確認され、理論から予想される値と誤差の範囲でよく一致することが明らかになった。この実験結果は、細胞の成長の不均一性が細胞集団のダイナミクスを考える上で重要であることを示唆する結果である。さらに、我々の開発した計測系を用いることで、これまで困難であった長期にわたる時系列データを取得し、細胞時系列に沿った齢分布は、理論から導出される最適系列の齢分布になり、集団の齢分布とは異なることも確認した。また、由来の異なる大腸菌株についても実験を行い、現在解析中である。 II. (一細胞の)一世代を単位とした成長速度(体積成長率)および分裂間隔時間と発現量(タンパク質濃度)の相関を調べたところ、当初の(一細胞レベルでも相関があるのではないかという)予想とは違い、ほとんど相関がないことがわかった。しかしながら、数世代を一つの単位とし、成長速度(体積成長率)および分裂間隔時間と発現量(タンパク質濃度)の相関を調べたところ、相関することがわかった。これは発現量のゆらぎが、数世代にわたる(状態が世代をまたいで引き継がれる)履歴依存性をもつことによるものであると考えられる。また、一細胞の時系列に沿った発現量分布と集団の発現量分布ではズレが生じることを確認した。これは、増殖能と発現量がなんらかの関係があることを示唆している。このような関係性を発見できたということは、長期世代にわたる時系列データを取得可能な計測技術をもつ利点である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
実験実施計画に記した実験をおおむね実施できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、一世代を基準にするのではなく、数世代をまたがった時系列情報や、時系列と集団の分布の差をみることによって、増殖能と発現量の関係を調べ、それを説明しうるモデルを構築することを目指す。
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Research Products
(1 results)