2014 Fiscal Year Annual Research Report
市場変化と制度形成-戦間期日本における綿織物産地の発展-
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13J09320
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宝利 ひとみ 東京大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 織物業 / 生産性 / 収益率 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、第一に、戦前日本における綿織物業の発展を産地綿織物業とならんで担った紡績兼営織布業について、注目して研究を進めた。そこで明らかになったことは次の通りである。兼営織布は,主に輸出用綿布を生産する主体として,産地綿織物業とならんで日本の綿織物業の中で無視できない地位を占め,そのことは,多くの紡績企業の兼営織布への参入に支えられていた。具体的には以下のとおりである。明治末より昭和初期までの長期間にわたり、兼営織布は、生産額の面でみれば綿織物業全体の3割前後を占めつづけ、その比率は低減することがなかった。また、多くの紡績企業において、織布工程の設備投資を積極的にすすめる動きがあった。兼営織布は,単なる過剰綿糸の消費手段ではなく,それ自体が紡績会社に利益をもたらす事業部門という積極的役割を期待されていた。兼営織布は,大阪や愛知など綿布の集散地に多く立地し,生産規模の大きさを十分にいかせるような大量需要が見込める製品を中心に生産していた。兼営織布の労働生産性は綿織物業全体のそれよりも高く,数量ベースで見ると1920年代後半に顕著な上昇をみせた。兼営織布の生産性の上昇は,おもに資本労働比率の上昇によって支えられていた。そして,労働資本比率の上昇をもたらした織布部門での設備投資は,兼営織布の高い収益性によって支えられていた。兼営織布部門が大きい紡績会社ほど,高い収益性を実現することができた。 第二に、福井県大野郡勝山町所在の勝山機業兄弟合資会社という絹織物企業に注目し、同社の営業報告書の分析を通じて、長期にわたる持続的な企業成長の過程を記述するとともに、それを可能にした要因を明らかにした。そこでは、1920年代に活発な製品開発がおこなわれたこと、また、財務危機をきっかけに自己資本を中心とした発展を指向するようになったことなどがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題が分析対象とする織物業は、産地織物業と紡績兼営織布部門に大別される。今回、紡績兼営織布部門の分析を行うことによって、これまで綿織物業史研究においてあまり詳しく検討されてこなかった、産地化ではない発展のあり方について検討することができた。この紡績兼営織布部門に関する研究は、論文にまとめて、『社会経済史学』に発表することができた。また、個別の機業家の経営文書を用いた経営分析をすることで、大量のマイクロデータを計量的に扱った場合とは異なる視角で戦前期の織物業の実態に迫ることができた。こちらの分析についても論文にまとめ、『経営史学』に投稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今までもおこなってきた、全国各地における個別の機業家の経営文書の発掘を、引続き進めてゆく。 また、それとともに、産地機業家にみられる、個人ではなく産地として組織された活動と、これまでみてきた個別の経営者としての機業家の行動との間にどのような関係があるかを明らかにしていきたい。この目的のために、機業家がどのようなときに個人としての利益を優先するか、また、どのようなときに組織立った行動をするのかについての実態を具体例にそくして明らかにしていきたい。
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Research Products
(2 results)