2013 Fiscal Year Annual Research Report
メダカで発見された巨大な新規DNAトランスポゾンAlbatrossの解析
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13J09339
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 雄介 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | トランスポゾン / ヘルペスウイルス / ゲノム / メダカ |
Research Abstract |
トランスポゾンは生物のゲノム上を転移するDNA配列であり、あらゆる生物種に普遍的に存在する。その転移は遺伝情報を変化させるため、宿主生物種のゲノム進化に寄与していると考えられている。複数のメダカ変異体の原因因子として見つかったDNAトランスポゾンAlbatrossは、そのサイズが少なくとも42 kbを上回り、これまで報告のあるトランスポゾンのなかで最大であることが知られていた。しかし、その全配列は決定されておらず、転移酵素、サイズ、内部構造の特徴、転移活性の有無などは不明であった。 本年度の解析では、メダカゲノム中に数十コピー存在するAlbatrossコピーのうち6コピーについて全長配列の決定を行った。その結果、全長は約180 kbにものぼることが示され、これまで知られているトランスポゾンのサイズを遥かに上回ることが分かった。内部にはDNAトランスポゾンファミリーの1つであるpiggyBacファミリーの転移酵素と高い相同性を示す遺伝子が見出され、この転移酵素がAlbatrossの両端配列を認識しそれより内側の配列を切り出す活性を保持していることを示した。興味深いことに、内部には少なくとも60個の遺伝子が存在し、そのうち約20個はヘルペスウイルスの遺伝子と高い相同性を示していた。Albatrossは魚類に感染するヘルペスウイルス種間で保存されている遺伝子の全てを持っており、ヘルペスウイルスゲノムと類似した特徴(遺伝子数、GC含量、全長のサイズ、長いリピート領域の存在)を示すことから、Albatrossはヘルペスウイルスゲノムと一体化した巨大piggyBac型DNAトランスポゾンであることが示唆された。これは、ヘルペスウイルスがトランスポゾンの転移機構を二次的に獲得したことにより宿主ゲノム内に内在化したという新規の現象を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
転移によるAlbatrossのゲノム内への挿入の検出が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初はAlbatrossの転移がゲノムにどのような影響をもたらすかを解析することを計画していた。しかし全長配列を解読した結果、AlbatrossはpiggyBac型トランスポゾンの転移機構を二次的に獲得してゲノム内に内在化したヘルペスウイルスであるという可能性が示唆された。このような現象はこれまで報告がないため、今後はこの仮説を検証するためにAlbatrossからウイルス粒子が形成されうるかを調べる。Albatrossのゲノム内への挿入を検出する解析は引き続き行う。
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Research Products
(5 results)