2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J09343
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮本 裕平 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 重力波 / 有効作用 / 有限温度の場の理論 / 相転移 |
Research Abstract |
本研究課題は、主に重力波観測により初期宇宙の相転移現象を探ることで、人工的な加速器では探ることのできない高エネルギー物理現象の間接的なヒントを得ることを目的としている。興味深い重力波源として第一に挙げられるのが、原始重力波である。これは初期宇宙のインフレーションとよばれる加速膨張期に生成されたと考えられている重力波である。また、インフレーションが終了するとインフラトンのエネルギーが放射成分に転化され、非常に高温の放射優勢宇宙となる。このような高温状態ではヒッグス場を初めとするいくつかのスカラー場は対称性を回復していたと考えられるが、その後は宇宙膨張による温度低下により有効ポテンシャルの形状が変化し、対称性が自発的に破れる。相転移中はポテンシャルに極小点が複数存在するため、場の値が相転移後に真空となる相が空間的な泡となって現れる。この泡の拡大・衝突に際して重力波が生成することが知られている。相転移現象の記述にはこれまで有効ポテンシャルが用いられてきたが、これでは動的な現象を厳密に扱うことができず、有効作用による記述が必要であると考えられる。 今年度は有効作用についての先行研究をさらに一般化し、これまで扱われてこなかったスカラー場とゲージ場との相互作用を取り入れた有効作用の計算に取り組んだ。この研究では有限温度状態におけるゲージ場を扱う必要があり、ゲージ自由度と物理自由度の区別や、ゲージ場が質量を持たないことなどに起因する解釈の困難があったため論文の出版が遅れているが、まもなく出版される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、これまでに習得した基礎物理理論体系を総合し、背景時空が時間発展する状況下で、有限温度媒質中での非平衡相転移現象を取り扱うための有効作用を用いた定式化を行うことを目標としていた。これまで考えられたことのなかったゲージ場との相互作用をも含んだ有効作用の計算を行うことができたが、背景時空の時間変化の影響については調べることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は重力波観測と相転移現象を結びつけることを目標とする。相転移の有無や性質の違いにより、原始重力波を薄める効果と新たに重力波が生成される効果を定量的に評価する。とりわけ熱的インフレーションで重力波が生成されると考えられてきたが、そもそも熱的インフレーションが起こるのかというより根源的な疑問が生まれたため、これを調べるために数値計算を試みる。
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Research Products
(3 results)