2013 Fiscal Year Annual Research Report
電極表面上で有機超薄膜が相転移する動的分子機構の解明
Project/Area Number |
13J09394
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
東 智弘 長崎大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | HOPG電極 / ビオロゲン / 一次相転移 / 界面電気化学 / エレクトロリフレクタンス / 分子間相互作用 / 動的分子化学 / 自己組織化 |
Research Abstract |
高配向熱分解性グラファイト(HOPG)電極上で、ビオロゲン吸着膜が相転移を起こすとき、どのような動的な分子挙動を示すかを解明することに取り組んだ。相転移の動的機構を様々なスケールで捉えるためのアプローチとして、相転移伝搬過程を蛍光顕微で動画として把握することを狙った。そのため、ビオロゲンが相転移する前後で蛍光発光が変化する、蛍光プローブ系の構築に取り組んだ。その過程で、ビオロゲンの相転移機構が、電極一分子間の相互作用、分子一アニオン間の相互作用によって変化することを見出した。主な成果は次のとおりである。 1. 側鎖にアントラセンやピレンなどの蛍光発色団を連結したビオロゲンを合成し、蛍光特性と相転移挙動を精査した。蛍光発色団が電極表面と強く相互作用するため、分子間相互作用が低下したこと、及び、かさ高い分子の空間的配列条件が課されるようになったことにより、これらのビオロゲンは緩慢な相転移を起こした。 2. 側鎖にフェニル基を持つジフェニルビオロゲン(dPhV)の相転移挙動を、電気化学測定とエレクトロリフレクタンス(ER)測定によって精査した。dPhVは、ビピリジニウム環にフェニル基を直接結合した板状分子であるため、HOPG表面との強いπ-π相互作用によって、高度に配列した吸着膜を形成した。そのため、dPhVの相変化挙動は、ジアルキルビオロゲンが起こす相転移よりも緩慢であった。 3. 側鎖にベンジル基を持つジベンジルビオロゲン(dBV)が、分子-アニオン間の親和的静電相互作用によって中間相をHOPG電極上に形成し、二段階のファラデー相転移を起こすことを発見した。この発見は、分子-アニオン間の親和的静電相互作用が分子集合過程へ関与することを示し、ビオロゲン相転移の動的機構を捉えるアプローチに向けて、新たな分子設計の指針を与えるものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ビオロゲン相転移の動的機構解明を目的とした検討の中で、分子集合過程に対する、分子間相互作用、分子-電極間相互作用、分子-アニオン間相互作用の重要性を見出すことができた。この実績は、相転移の伝搬過程を動画として捉えるために必須な蛍光プローブ系構築へ、新たな設計指針を提案したこと意味する。つまり、適切な分子設計に基づき、蛍光強度が変化しつつ、鋭く相転移する蛍光プローブ系の完成が期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
ビオロゲンの酸化還元前後での、分子内電子移動消光能の差による蛍光強度比の変化を用いた蛍光プローブ系を構築し、相転移伝搬過程のin situ蛍光顕微観測に挑む。蛍光プロープ系には、側鎖に芳香環以外の蛍光発色団を連結したビオロゲンを合成して用いる。側鎖の発色団には、電極表面との相互作用が小さく、分子間相互作用の増強が期待できるクマリンやカルバゾールを用いる。 その他の蛍光プローブ系構築の試みに、蛍光色素分子とビオロゲン分子を電極上に共吸着させ、ビオロゲンが相転移する際に、蛍光色素が電極上から脱着して発光する系を構想している。また、アザピレンを分子骨格としたπ拡張型ビオロゲンを合成して用い、蛍光色素を連結しない、ビオロゲン単独のプローブ系を用いる準備を進める。
|
Research Products
(8 results)