2013 Fiscal Year Annual Research Report
母親による調律的応答が子どもの共感性発達に与える影響の検討
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13J09403
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
蒲谷 槙介 東京大学, 大学院教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 調律的応答 / アタッチメント / 母子相互作用 / 縦断研究 |
Research Abstract |
【研究内容】本研究では、生後12ヶ月前後の乳児が母親との20分間の相互作用中にいかなる情動表出(笑う、泣く等)を行うのか、そして母親がどのような形式で調律的応答(乳児のネガティブな心的状態をメタ化するようなフィードバック的応答)を行うのかを検証するべく観察データを収集した。更にその調律的応答の生起頻度が、母親自身のアタッチメントスタイル、わが子についての表象、共通乳児刺激を用いて測定された特性的マインドマインディッドネス(乳児への心的帰属傾向)といった母親の主観的側面と如何なる関連性を示すのか検証するべく、母親への質問紙およびインタビューデータの分析を進めた。結果として、アタッチメントスタイルが安定傾向の母親は、不安定傾向の母親よりも、わが子についてのイメージを容易に産出することができ、また乳児のネガティブな情動表出に対して感情面よりも欲求的側面についての心的帰属をしやすいことが示された。 【本研究の意義と重要性】これまで子どもの共感性発達を扱った研究(e.g. Kestenbaum et al., 1989 ; Kochanska et al., 1999 ; Liew et al., 2003 ; Valiente et al.,2004)では、安定的でオープンな母子関係性のもとで子どもが共感性を十全に発達させるという大まかな想定がなされてきたが、具体的に母親が行う何がそういった子どもの社会情緒的発達を促進するのかは明らかにされてこなかった。この点に関して、本研究を含む一連の縦断研究では、母親が行う調律的応答こそが子どもの共感性発達の促進因となるとの仮説の下、母子相互作用を客観的に判断可能な行動的指標(表情や発声発話)を用いて詳細に分析することを通じて、これまでブラックボックスのままであった早期母子関係における子どもの共感性発達プロセスを、世界に先駆けて綿密に検証することができると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では母親による調律的応答とのちの子どもの社会情緒的発達の関連性を、綿密な縦断デザインを以て検証するべく、まず量的分析に耐えうるサンプルサイズを確保することが最も重要な課題であった。この点に関して、申請者は昨年度までに40組の母子の協力を得るに至り、生後4ヶ月時および生後6ヶ月時のデータ収集を完了することができた。また、続く生後12ヶ月時および18ヶ月時の調査も予定通りに進行中であり、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度からは、すでに協力を得られた40組の母子を対象に、対象児が生後18ヶ月、24ヵ月になった時点でのデータ収集に重きをおく。この点に関して、特に冬季と夏季では対象児の体調不良による調査の延期が多くなることが予想され、その場合には、当初の計画よりもデータ収集が遅れることが考えられる。このような事態が生じた場合には、①特に子どもの社会情緒的発達に関するデータを当初予定していたよりも前倒しの月齢で収集すること、②調査協力者へ追加の質問紙調査を依頼しデータの補完を行う、といった方略を駆使し、可能な限り当初の研究目的が十全に達成されることを目指す。
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Research Products
(8 results)